「自己中心性バイアス」から抜け出し、相対ベースのものの見方を身に着ける
――そういう能力はもともとあったものなのですか? それともマーケティングの仕事をするなかで、磨かれてきたものなのでしょうか。
音部:両方だと思います。もともと、そうした資質だったから、マーケティングという仕事に魅力を感じたと思いますし、仕事をするなかで磨かれていった部分もあると思います。
富永:そうですね。そうかもしれない。
――そう考えると、マーケティングの仕事はそもそも適性のある人、ない人がいるということでしょうか。
富永:他者に一切、感情移入ができないような人であれば、ちょっと無理かもしれませんが。ある程度、感情移入することができる人であればマーケティングの仕事はできると思います。
音部:マーケティングとは市場創造ですが、その実現に至るうえでヒントとなるアイデアは、ひとつの問題を複数の視点・視座で見たときに発生しやすい。ですから自己中心性バイアスをどう外して、多様な視座で問題を捉えられるかは重要ですよね。
バイアスをどう外すかが重要なのですが、でもバイアスがまったくなくなったら情報の取捨選択や解釈が難しくなる。フィルターは必要なのですが、バイアスは外したい。でもこれが、できる人ってほとんどいないと思います。そもそも、簡単に外せるようなら、そのバイアスは恐れるに足りません。
では、どうすればよいかというと、私の場合は「別のバイアスを入れる」んです。今かかっているバイアスが何かがわからないので、別のバイアスを入れてしまえば、強制的に今のバイアスは今のバイアスではなくなるんですよね。
富永:私の場合は、「相手の内在論理を類推しなさい」というアドバイスをします。なぜ相手がそういう判断をしたり、発言をしたりするのか、背景を理解するようにという話をします。