学生に個性を求めるのは企業の「エゴ」
西井:今回、発売した書籍のタイトルは「なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすか」です。中俣さんは、人事も経験されていますが、タイトルのようなことを実感することはありますか。
中俣:前職のディー・エヌ・エーで採用を担当していたのですが、確かにみんな同じような自分の強みばかりを話していました。フリーペーパーをやっている学生が多いので「フリーペーパー男子」と呼んでいたくらいで、同じような学生時代の経験を話すという事象はあると思います。ただ、それは学生に責任はないと思っています。中途採用だとスペックを見て、「何ができるか?」、「実績は?」と選考方法はシンプルですが、新卒採用はポテンシャルを見るので見極め方はさまざまです。
なのに、多くの企業は同じような採用手法をとっている。ここに一番の原因があると思っています。企業側の採用要件も手法も同じなのに、学生に「何で同じなの」っていうのは企業側のエゴでしかない。企業の採用スタイルが画一的なことが大きな問題だと思っています。
僕ら採用する側だって就職のときに同じ経験をしているのに、企業側に立った瞬間に目線が変わるっていうのは大人の悪い癖だと思います。
笹木:スペックじゃなくて、ポテンシャルで見極めるという話はとても共感します。
「知識よりも空想のほうが、はるかに重要だ」というようなアインシュタインの名言がありますが、学生の頭の中に既にある知識より、学生の心の内側に企業も迫っていきたいですよね。中俣さんはポテンシャルをどうやって見極めていましたか?
中俣:まずは、企業側がどういう人に来て欲しいのか、どんな人が入社すれば幸せになれるのかを決めます。企業が欲しい人材を言語化することがポテンシャルを見極めるスタートです。
次に、型にはまった面接と会話だけで見極めるのは難しいので、見極められるシチュエーションを多くつくっていきます。ヒト・モノ・カネを惜しまずに、採用側が見極める努力をするべきだと思います。
西井:そういう採用を企業がしてきたときに、学生側ができることは何でしょう?
中俣:本気でやって欲しいということだけですね。学生が本気か本気じゃないかのパラメーターは、企業側が動かせない。本気かどうかという点は、学生側が動かすものだからです。