【前回コラム】「宣伝部はいかにデジタル化するか ~その2~」はこちら
デジタル広告を大いなる調査と見て、「反応データ」を分析する。
「宣伝部はいかにデジタル化するか」の三つめは、インタラクティブであるデジタル広告を、「広告」であると同時に大いなる調査と見て、広告配信結果データを分析し、ブランドマネージャーにデータを返すことだ。
そもそもターゲット想定そのものが、「想定するもの」であり、「実証されていないもの」である可能性がある。
事業部のブランドマネージャーが、想定しているターゲットプロフィールは、実際「本当にそんなターゲットは実在するのか」、または「そのターゲットはこのメッセージに反応しているか」は実証してみなければならない。宣伝部が広告配信を行い、広告配信結果データを持つことが、宣伝部のデータ武装となる。
筆者は「反応した人がターゲット」と主張しているが、インタラクティブ広告の反応者をどんな人かを分析することで、ターゲット探索を行うことができると考えている。
反応した人と反応しなかった人を比較して、IDに紐づいた属性分析が可能である。たとえば、配信手法によっては「広告によってサンプリング応募した人は、女性誌は何を買っているか」を分析し、反応しない人との差を見ることができる。元々のターゲットプロフィールに女性誌は何を読むかを想定していたとしたら、そこにズレがないかどうかを確認できる。
ズレがあれば、ターゲット想定を替えるか、メッセージ(クリエイティブ)を替えるかしなければならない。そうしたことを、宣伝部はデータによって、ターゲットプロフィールを設定しているブランドマネージャーと丁々発止やりとりをして、最適な投資ターゲットとメッセージ開発を共同開発する立場にある。
データ武装することで、宣伝部は単なる代理店への発注部署ではなくなる。そこで最も重要なポイントは、事業部があくまでブランド単位の商品のマーケティングとするのに対して、宣伝部は消費者データやオーディエンスデータでマーケティングするということだ。
LTV(ライフタイムバリュー)というワードの概念は、企業によって様々だ。
日本は人口減少社会である。LTVをどう定義して、どうマーケティングに位置づけるのか・・・。消費者をオーディエンスデータとしてどんなメディア接触とブランド接触・ブランド体験をしているかを把握することで、企業の全体最適としての広告投資もできる。
複数のブランドを展開する企業では、ブランドごとに広告配信することすら無駄になる。
複数ブランドを展開する企業にとって、プログラマティックとは、この掲載面に、このタイミングで、このオーディエンスがアクセスしてきたら配信すべきブランドは何かを最適化して、ベストな広告を配信することだ。ユーザー単位で管理できれば、このIDには自社ブランドの広告の何と何がいつ配信されているかを把握しておき、最も適切なブランドのメッセージを送る。そうした仕組みを構想しておくべきだ。
また、広告配信結果データとしての、反応者を「購買した人」と定義して、トラックすることもできる。たとえば、パーミッションのとれているTポイントカードIDに広告配信をして、そのIDの購買行動をトラックすることが可能だ。
従来、流通のバイヤーとの交渉にテレビスポットのGRPを提示していたと思うが、今後はどんな広告展開でどれだけ売れたかというデータを持ってバイヤーと棚取り交渉をすることにもなるだろう。GRPはあくまで何発打ったかであって、どんな効果に結びついたかではない。
- 広告が購買行動をどの程度促したかを可視化できるようにすること。
- 消費者単位のユーザーIDベースのマーケティングをすること。
- STP(セグメント・ターゲティング・ポジショニング)も広告配信結果データを含むデジタルデータで最適化を果たす。
おそらくこうしたデジタルマーケティング最前線を主導するために宣伝部の役割は重要だ。
3rdパーティデータ、2ndパーティデータ、自社が行った広告配信結果データ、これらを駆使して、企業全体のデータマーケティングを主導する。
3rdパーティデータとしての、
- 購買データ
- テレビ視聴データ
- ジオデータ
- ソーシャルデータ
これらを駆使し、かつメディアとの連携(オウンドメディア戦略は、これからはメディア連携が肝になる)で、どれだけメディアのオーディエンスデータ(いわゆる2ndパーティデータ)を使える状況にするか、ここは広告を発注する立場で取得できるものはゲットしていきたい。それが次世代の宣伝部である。