世界のデータ利活用規制は、2018年の欧州におけるGDPRの施行から始まったと言える。そんな欧州の厳しい規制に準拠し、世界26カ国に広告配信プラットフォームを展開するグローバル企業Teadsは、クッキー規制にどのように備えているのか。Teadsのフランスオフィスでチーフデータオフィサーを務めるレミ・カッケル氏に聞いた。
クッキーレス時代に備えた2つのソリューション
GDPRやCCPAなど、海外ではすでに個人データの保護やその取り扱いに関する法規制が行われている。
さらにGoogleがChromeにおいてサードパーティークッキーのサポートの終了を発表。パーソナルデータの利活用に関しては、今後も様々な制限が生まれると予想される。
2011年にフランスで誕生したTeadsは、選定した優良媒体の記事の間に広告配信を行うプラットフォーム運営をビジネスモデルの中心とし、2015年には日本法人も設立。26カ国にサービスを展開している。
Teadsでチーフデータオフィサーを務めるレミ・カッケル氏は、「これまでは広告配信を行うための顧客のデータ活用が、すべてクッキーで完結していました。クッキーが使えなくなる今、広告ビジネスには新たなエコシステムが必要とされており、さまざまな代替テクノロジーが提案されています」と話す。
同社では2年ほど前から、クッキーレスに備えた準備を進めており、Teads Cookieless Suiteという、2つのソリューションをすでに実行フェーズに移している【図表1】。
図表1 Teads Cookieless Suite(クッキーレススイート)
ソリューションのひとつがメディアコンテンツの文脈からターゲティングを行い、広告を掲載する「Contextual Targeting(コンテキストターゲティング)」だ。Teadsのプラットフォームが広告を配信するのは選定された優良媒体のみ。それらの優良媒体の記事コンテンツを500以上のコンテキストセグメントに分類し、さらにコンテンツの深度を4階層で解析している。単なるキーワードではなく、「文脈のポジション(タイトル・サブタイトル・段落)」や「出現頻度」等を解析し、文脈的に記事と関連性のある広告を掲載するため、読者の興味関心が高い広告を配信することができる。
もうひとつのソリューションが、クッキーの代替案となるデータを組み合わせることで構築された「Audience Targeting(オーディエンスターゲティング)」だ。これは次の4種のデータを組み合わせることで実現しているという。
①サイトへのログイン情報の活用サイトにログインの仕組みを導入することによるユニークIDの活用。
これにより、個々の正確なターゲティングが可能となる。
②パブリッシャーから提供されるファーストパーティーデータの活用パブリッシャーサイト内の行動データを活用。該当サイトのヘビーユーザー層を詳しく知ることが可能。
③ブラウザ側が開発しているターゲティング手法の活用現在、最も開発が進んでいるのは、Googleの「Chromeプライバシーサンドボックス」。ユーザーの動きによって興味・関心層ごとにコホートと呼ばれるセグメントをつくる。
詳細セグメントは用意せず、個人の特定は行わない。
④Predictive Audiences(予測オーディエンス)の活用「予測オーディエンス」は先述の「コンテキストターゲティング」と並べてTeadsが提供するクッキーレス代替データソリューションであり、使用ブラウザ、時間帯、アクセスした記事の内容といった情報から、AIの機械学習によるアルゴリズムを使用し、特定のオンラインアクティビティに向け関連性の高いオーディエンスをターゲティングする。
「ひとつのソリューションのみでは、クッキーの役割をまかなうことは難しいです。しかし、この4つを組み合わせることで、ユーザーのプライバシーを守りながら、ユーザーにあわせたターゲティングを行うことができると考えています」とレミ氏はクッキーレス時代のソリューションに対する考えを話した。
クッキー規制前の現段階で検証や準備を進めるべき
Teadsではまだサードパーティークッキーが使用可能な段階で、従来のクッキーを使用したターゲティングとクッキーレスソリューションによるターゲティングのA/Bテストを実施。海外の検証事例では、クッキーレスでのコンテキストターゲティングは、クッキーベースのターゲティングに比べて約2倍のブランド認知に貢献したという結果も出ているという【図表2】。
図表2 クッキーを使用したターゲティングとクッキーレスソリューションのA/Bテスト結果
また、同社ではグローバルで見た際、クッキー撤廃への認知度が低い日本を含むAPAC地域に向け、クライアントとなる広告主企業や広告会社、パブリッシャーへの「クッキーレス」に関する説明会を実施。スムーズに移行できるようにソリューションの試験導入なども行っている。
レミ氏はクッキーレスにより、改めてユーザー中心の体験が生まれることは、ブランドがユーザーとの信頼関係を築き上げていく上で重要なきっかけとなると話す。
「クッキーの規制とは、個人の特性に合わせた広告配信ができなくなることでも、メディアを有効に活用できなくなるということでもありません。単に、『業界にとって責任ある持続可能な広告への移行の必要性』、『個人を特定せず、ユーザーは安心安全な環境下において、そのモーメントに合った広告クリエイティブを配信可能にする時代がきた』ということなのです」。
最後にレミ氏は、日本のマーケターに向けて、「日本では、クッキーレスに対して向き合っている企業が、欧米などと比較してまだ少ないように思います。しかし、これは真剣に向き合うべき課題。従来のクッキーを使用したソリューションとクッキーレスソリューションの比較テストなど、今のうちに行っておくべきことは多くあります。クッキーが規制された際にスムーズに移行できるよう、検証や準備を進めてほしい」と考えを示した。
Teads
Chief Data Officer
Remi Cackel氏
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