ランシステム 代表取締役社長CEO 濱田文孝
発売中の『販促会議2011年12月号』に掲載の連載「トップはアイデア販促マン」。こちらでは、企業のトップに、自社サービスの顧客獲得方法、販促ノウハウを直接聞いている。いかにして新たな市場を切り拓いていったのか。販促の工夫は何か。経営者の視点からのヒントが多数得られる。
2189億円の市場規模を持つ時間消費型産業の複合カフェ
複合カフェが新しい時代を迎えている。1970年代の「マンガ喫茶」に始まり、90年代の「インターネットカフェ」、90年後半から2000年前半に登場した複合カフェ、徐々に多様化する消費者のニーズに応えて進化しながら、現在、2189億円の市場規模を形成する時間消費産業に発展している。
複合カフェのパイオニアのランシステム(本社・東京都豊島区)は、複合カフェ「スペースクリエイト自遊空間」の1998年の1号店以来、全国に184店舗(業界トップ、直営58、FC126)を展開し、業界のリーディングカンパニーとして着実な業績、多店舗の展開を実現している。年商91億7500万円、経常利益及び純利益も対前年比で281.3%、179.1%と増加している。
ただし、複合カフェの市場はここ数年、横ばい状態が続き、業界全体で活性化が大きな課題の一つだ。業界の大手企業が設立した日本複合カフェ協会(JACC)によれば、430法人、2481店舗の規模に成長しているという。
複合カフェは進化の歴史を持ち、さまざまなオリジナルコンテンツを提供しながら発展してきている。複合カフェの定義は「時間制課金システムを基本とし、マンガ、ゲーム、インターネットや各種アミューズメント及び飲食サービスなどの複合的なコンテンツを店内に提供することにより、お客さまにやすらぎの場所として過ごしていただける『時間・空間消費型施設』の総称」である。
同社は自遊空間事業と家庭用ゲーム機の専門販売店「桃太郎」の事業の二本柱で事業展開を行っている。多様な娯楽コンテンツを施設内にて同一料金で提供する“複合カフェ”を全国で初めて展開したのが同社である。コミック・インターネット・ダーツ・ビリヤード・カラオケなど、24時間・年中無休で楽しめる施設となっている。
同社は店舗数でも184店とトップ、会員数約1000万人を超えている。また、複合カフェの最大級の旗艦店舗として、「BIGBOX高田馬場店」を運営しており、そこでは業界初の自動入退場システムや、5万冊のコミックを短時間で検索する最先端のシステムを導入した次世代複合カフェとなっている。
複合カフェの利用実態は、顧客の85%が20代から40代の事業モデルになっている。しかし超高齢化社会を迎えるわが国ではシルバーやシニア層に向けた、新しい事業展開の必要性に迫られている。同社でも、シルバー、シニア向けの対策を2年前から始め、徐々にその効果を上げている。
気配りを重視した高質なサービスが販促策
ランシステムの販売促進策で力を入れているのは、シルバー、シニアの顧客を増やすことである。
濱田文孝社長(69歳)の2年間の店長経験から「団塊世代以上のシルバー族に一度『自遊空間」に来店してもらい、ファンになってもらう戦略こそ業績拡大、利用者拡大につながる」という戦略を打ち出している。
「5年前に、FCの店長を2年間経験しました。しかし、自分自身の年齢、経験から、当初は『自遊空間』利用する上で抵抗がありました。おそらく、中高年層にとって気軽に来店できる状況にはありませんでした。しかし、店長の気配りがあれば、感動できる施設であることを確信しました。大人、特に男性の遊び場、くつろぐ場所、情報収集の場所として、これ以上の最適な空間はないのではないか、と考えるようになりました」と濱田社長。
こうして2年前から、シルバー、シニアが利用しやすい空間作りが始まった。一度来店すれば、リピーターになる確率は高かった。店舗内の設備は充実しているので、変えるのはシニア層に納得してもらえるサービスの内容と判断し、細かいところから改善を急いだ。
中高年層が使いやすい店内サービスの工夫、集客のための特典など、続きは『販促会議2011年12月号』をご覧ください。
ランシステム 代表取締役社長CEO 濱田文孝氏
(はまだ・ふみたか)
1942年鹿児島県生まれ。建築業界を経て、2007年にプラザ商事の複合カフェ部門部長となり、2009年3月にランシステムの統括事業部長担当に着任。同年9月の代表取締役に就任。日本複合カフェ協会会長も務める。趣味はスキューバダイビング。