ネット広告が3兆円の大台に
電通グループは2月24日、2022年の日本の総広告費が前年比4.4%増の7兆1021億円だったと発表した。2007年の7兆191億円を超え、過去最高となった。制作費やECなどを含めたインターネット広告が前年比14.3%増で3兆円の大台に乗った。4マスメディアはラジオが増加したものの全体を補うには至らず、2%減となった。
媒体費では、インターネット広告が前年比15.0%増の2兆4801億円となった。そのうち、4マスメディア由来のデジタル広告費は、同比14.1%増の1211億円だった。構成比トップは「雑誌デジタル」で5.2%増の610億円、次いでテレビデジタルが40.9%増の358億円となった。
テレビ番組の見逃し配信やリアルタイム配信サービスなどのネット動画配信の広告費は40.6%増の350億円。インターネットに接続したテレビ受像機の普及や、大型のスポーツイベントの中継、ドラマなどが充実し、動画広告需要が高まったという。
既存の4マスメディアは、テレビが前年比2%減の1兆8019億円、新聞が3.1%減の3697億円、雑誌が6.9%減の1140億円、ラジオが2.1%増の1129億円だった。
経産省推計では1.2%減
2022年1〜12月の広告業売上高は、前年比1.2%減の約5兆6620億円だった。経済産業省が2月16日に発表した、22年12月分の確報値で集計した。
インターネット広告は同比5.1%増、SP・PR・催事企画は8.3%増と伸びたが、テレビの5.5%減をはじめ、新聞の6.8%減、企画・制作や調査などをまとめた「その他」の5.7%が大きく、全体では前年を下回って着地した。
12月単月は、前年同月比2.0%増で2カ月連続の増加となった。メディア別ではテレビが3.0%減で、13カ月連続の減少。新聞は10.1%減で5カ月連続、ラジオは4.0%減で8カ月連続の減少となった。雑誌は3.4%増で3カ月ぶりの増加。インターネット広告は27カ月連続の増加で、0.8%増。単月の伸び率としては2006年の集計開始以来、最も低い数値となった。
テレビでは、タイムで流通・小売、交通・レジャーなどが減少。スポットは情報・通信、家庭用品、交通・レジャーなどが減少した。一方、インターネット広告では流通小売業、交通・レジャーが増加したほか、官公庁・団体も増えた。
通年では、タイムは上期で冬季北京五輪、サッカーW杯カタール大会などがあったものの、前年の東京五輪の反動減が大きく、前年割れとなった。スポットは半導体不測や、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響を受け、情報・通信や自動車・輸送機器関連品が低調となった。
長期的にみると、テレビ広告は2014年を境に景況と一致しなくなっている。第3次産業活動指数を見ると、景気拡張期だった2012年11月〜18年10月のうち、14年に入るまでは上昇傾向にあるものの、同年を境に長期的に下降トレンドにある。これと交差する形で上昇を続けているのがインターネット広告で、21年夏ごろまでにかけて急速に活発化した。
復調の兆しもある。2022年度第3四半期時点の予想で、タイムとスポットの合計でフジテレビを超える見込みのTBSテレビは、タイムについては「23年度上期はレギュラーベースで22年度を超える売上を確保できる見込み」とした。一方、スポットでは「単価増や枠運用で第3四半期は前年並み。第4四半期は動きが鈍い状況だが、セールスに努める」としている。
電通単体の売上総利益は3.9%減
テレビ広告費の減少を受け、2022年度1〜12月の電通単体の売上総利益は、前年割れの3.9%減で、2126億円で着地した。電通グループの国内事業を担う電通ジャパンネットワークの媒体別純売上高でも、テレビは前年比6.5%減の6245億円で、市場全体よりも減少率が大きい。
こうした中、電通グループが収益拡大の期待を寄せるのが、IT・コンサルティング関連市場だ。経産省の特定サービス産業動態統計調査によると、情報サービス業のうち、ITシステムの導入コンサルティングなどを含む、「システムインテグレーション」の2022年通年の売上高は、6兆1235億円。全体でも約16兆円で、広告業売上高の3倍近い規模となっている。
「さらに広い販売促進のマーケットも15兆円ほどあると言われる。広告を中心にソリューションを提供する当社にとって、広告の6兆円、広義IT・コンサルティングの6兆円、販促の15兆円が、ひとつの新しいマーケットに変わりつつある」(電通の榑谷典洋社長)