ビッグミート 代表取締役社長 神宮律男
トップはアイデア販促マン~経営陣が語る販売促進――「販促会議2012年1月号」より
駅前立地、テイクアウトコーナーが特徴の焼き鳥居酒屋
「安くておいしければ居酒屋は繁盛する」という常識が崩れ始めている。過当競争に突入している外食企業で繁盛店になるのは至難の業である。 そうした厳しい状況の中で、着実に業績を上げ、快進撃を続けているのが、精肉店が直営する素材厳選の焼鳥居酒屋「居酒屋大(ビッグ)」である。運営しているのが、ビッグミート(本社・埼玉県富士見市)で、埼玉県の東武東上線の沿線を中心に東京も含めて14店舗(うち1店舗がうどん専門店)を展開。7年連続で売り上げを伸ばしている。
同チェーンは家族連れ、会社員、地域の女性客など常連客が8割と賑る。さらに焼鳥独特の煙と匂いのシズル感が、集客効果を高めている。 店頭で焼鳥を購入する際、店内の様子がよく見えるので、「今度、一度飲みに行ってみよう」という来店喚起の効果もある。だから、店はいつも満席状態が続き、活気付いているのだ。
同店の特徴の一つが、家族連れ、会社員、地元の女性客など常連客が目立つことである。神宮社長は「安くておいしい居酒屋として、口コミをきっかけに来店するお客さまが増えています。うまい焼鳥を売っている店がビールを飲ませてくれる、という安心感が、来店者が増えている理由の一つでしょう」と分析している。
店頭で実施する販促策の一つが店長采配の焼鳥値引きセールだ。通常1本80円の焼鳥を1本60円に下げる、生ビール480円を280円にするキャンペーンだ。店長が店の売り上げ状況を判断し、どのタイミングで実施するかを本部に申し出て、店長の責任のもと積極的に実施している。
“訴えることと分かりやすさ”が販促で一番のカギ
この店の最大の特徴は「国産、手刺し」の焼鳥であること。精肉店直営なので、上質の肉を安く大量に仕入れ、低価格で提供できるのだ。本社工場で1日1万本の焼鳥を手作業で製造する、手づくりにこだわっている。なぜなら「機械で刺したものと、手刺しは食べたら分かる」という客が増えているからだという。客単価は店によっても異なるが、大型店で2700円、中型店で2100円と手頃な価格帯である。メニューは素材厳選の肉、市場から直送の魚と野菜を使っている。焼鳥は17種類、オリジナル創作料理は200以上と豊富だ。
同社にはレシピはあるがマニュアルがない。素材は本社から送り、味付けは各店で工夫しているので、微妙に味が違っている。手づくり感を前面に打ち出せる居酒屋だ。エリアマネージャーが味をチェックするが「おいしい」ことが一番である。 神宮社長は「マニュアル化しなかったから生きのびてきました。店ごとに工夫することで、よりおいしいメニュー作りが実現しています。『安くておいしい』という評判も、手づくり感と飽きられないことに取り組んでいるから。これが、常連客の増え続ける理由ではないでしょうか」と話す。
同社の販促戦略の一つが独特の店舗カラー。それについて聞くと、神宮社長は間髪入れず「燃える色といえば赤、だから看板は赤で統一しています」と答える。店内のメニューも赤を使ったものが多く、目立っている。常連からの「一人できても退屈しない。貼り出してあるメニューをじっくり見ながら飲むのも楽しみ」という声もあり、店内には、どこに座っても見えるように工夫したメニューが貼り出されており、そこに目立つコピー、ユニークなキャッチを付けている。
販売促進で一番大事なことは何か。神宮社長は「顧客に訴えることと分かりやすさが大切です。“熱いことが訴えること”になると思います。強い思い、情熱がなければ人には伝わりにくいものです。大事なのは、攻撃性と熱い思い、仕事やほかのことでも、熱くならない人は宣伝・販促の仕事は難しいと思います」と熱く語った。
このように、神宮社長は熱血漢、情熱の人だ。鹿児島から18歳で上京、会社勤めの後精肉店で修行し、29歳で独立。35歳で居酒屋ビッグを開業した。上京以来、社長の志は自分で会社を起こすことだった。 社長の好きな言葉の一つが、同郷の西郷隆盛と親交が深かった志士、平野国臣が語った「わが胸の燃ゆる思いにくらぶれば、煙はうすし桜島山」である。熱い志がすべての原点と話す。
続きは「販促会議 2012年1月号」で
取材・文 上妻英夫(KIプレス)/経済ジャーナリスト
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