【販促・集客メディアフォーラム(No.3)大阪ガス】「行動観察」を起点とした店頭づくり

「宣伝会議販促・集客メディアフォーラム2012」が8月28日、29日、東京国際フォーラムで開かれ、新カテゴリを切り拓いた商品の販促、ネットと連動して店舗へ集客した施策、チラシ活用、消費者の行動観察などをテーマに、多くのセミナーが行われました。その一部を9月から10月上旬にかけて、本欄で紹介します。

大阪ガス行動観察研究所 主任研究員 越野孝史氏

言語化されない潜在的なニーズが本当の「顧客志向」につながる

越野孝史氏

大阪ガス行動観察研究所 越野孝史氏

行動観察が生まれてきた背景には、マーケティング・パラダイムの転換や、「サービスサイエンス」の概念などの要素があります。商品を作れば売れる時代から、販売努力をしないと売れない時代、そして今は顧客のニーズを創造・開拓する時代へと転換してきました。そこで今、重要になっているのが、商品が現場で「どう使われているか」を知ることです。

また、生産と消費が同時に行われて形が残らない「サービス」を科学的に分析するために、現場に赴いて観察することの重要性が増してきました。観察の対象は、普段なら意識されない日常の風景。普段なら見過ごすような事からも、一定の体系に基づいて観察することで発見が得られます。例えば、掃除をしている女性の腰が曲がっている場合、掃除機のパーツの位置関係に問題があることがわかります。これはもっとも初歩的な分析で、実際には多岐にわたる行動、ほんの小さな行動を観察し、分析するわけですが、こうした行動観察に基づいた分析が、商品開発やサービス改善などに活用されています。

従来のマーケティングリサーチは“言葉”で聞き出す手法が一般的でしたが、一説には行動の90%以上が無意識と言われるほど、人間の意識は潜在的な部分が大きいのです。深いレベルの潜在意識になると言葉で引き出すことは不可能と言えるでしょう。本人すら気付いていない行動を観察・分析することで、言語化されていない潜在的なニーズやリスク、さらにはその人の持つスキルなどを“見える化”するのが行動観察の領域です。

売り上げ向上、閲覧率アップ…行動観察を販促に落とし込む

行動観察を実践する際には、“問い”を持って観ること、さまざまな視点から観ること、自分の価値観や仮説に左右されないことなどを意識します。“きっとこうだろう”と決め付けてかからずに、できれば複数の視点で観る、録画して何度も観るのも有効です。また、インタビューと組み合わせることも多いです。観察で得られた「事実」「気付き」を元にインタビューを行うことで、「背景」や「気持ち」を補強することができます。

販促への活用事例は多数あります。例えば、施設改善を目的とした複数の取り組みでは明らかな成果を得ています。イベント会場における家庭用機器の展示について、行動観察に基づく改善を実施したところ、商品閲覧率が改善前の5倍、販売台数が3倍に向上しました。

また、「スーパー銭湯」における行動観察では2日間で113項目の改善点を抽出し、改善後には生ビール売り上げ59%アップ、清涼飲料水の売り上げ75%アップという成果が出ています。そのほか、商品開発やスキルの可視化などへの活用でも実績があります。

行動に表れない心理の分析や、プライバシーの観点から行動を観られない環境など、苦手分野はもちろんあります。しかし、「顧客志向」といわれるこの時代、顧客自身も気付かないニーズを知ることのできる行動観察は、これからのマーケティングの鍵を握る手法になっていくと思います。

 →次回はNo.4ユニリーバ・ジャパンです。

【バックナンバー】

販促・集客メディアフォーラム事務局 2012
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