《このコラムは、新聞「アドバタイムズ」2010年8月25日発行号に掲載された「i(アイ)トレンド」をWeb上に転載したものです》
先週気になるニュースが飛び込んできた、米クーポン共同購入サービスのGROUPON(グルーポン)が、日本とロシアの同様のサービスを買収し、両国に進出するというのである。買収するのは日本の「Qpod(クーポッド)」とロシアの「Darberry(ダルベリー)」である。グルーポンは1300万人の会員を持ち、世界29カ国でサービス展開している。従来からあるネットの共同購入サービスとクーポン共同購入サービスはどう違うのか、特にクーポン共同購入サービスに焦点を当てて今後を占ってみたいと思う。
まずは共同購入サービスであるが、ある商品をネット上で購入する人数に応じて、購買価格が変化するという仕組みである。代表的なサイトとしてはネットプライスや楽天共同購入がある。購買にゲーム性を持ち込んだことや、人数が増えると安くなるので、購入希望者が友人や第三者に告知するという「口コミ」で広まってゆくという特性がある。共同購入が成立すると参加者は代金を引き落とされ、商品が手元に届くという仕組みである。購入は最低注文数に達しないと成立しないこともあるようだ。
ではクーポン共同購入サービスはどうか。まず、大きな違いは提供されているのが「商品」ではなく「サービス」や「食事」の利用権利ということがあげられる。レストランの飲食やレッスン、映画などのサービスを受けられるケースが多い。つまり「クーポン」と称しているが前払いでサービスを購入しているのである。また割引率が高いのも特徴である。それは、通常販売している価格からの値引きではなく本来の「定価」に対する値引きであったり、実際には、何らかの事情でサービスを利用しない人がいるのからではないかと筆者は考えている。商品の仕入れと配送が発生する共同購入サービスと違い、利用されない分も考慮しての値付けが可能である。
このようなサイトはクーポッド以外でも地域クーポンの「ホットペッパー」のWeb版であるFooMoo(フームー) をはじめ、ドリパス 、Piku、ピタチケット、Prepon、ポンパレードなど続々と立ち上がっており、サービスの認知も高まるだろう。
しかし、これらの普及するにつれ消費者保護の問題が出てくることも予想される。サービスを事前購入する点で通常のクーポンと違うのでクーポン共同購入という呼称も誤解を招く可能性がある。また、決済以降に予約を取る必要があり、利用条件なども制限される可能性も高いことから、利用できなかったり内容が違っているなどのトラブルが発生しないよう健全に育成されることが望まれる。
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