CMの力、50周年で再確認 新設ME賞はキリンビール
全日本シーエム放送連盟(ACC)は1日、2010年度「ACC CMフェスティバル」の贈賞式を都内で開き、テレビCM部門の最高賞「総務大臣賞/グランプリ」に、和食店運営の梅の花(本社・福岡県久留米市)のシリーズCMが選ばれたと発表した。並み居る大手広告主を押しのけての受賞に、佐々木宏審査委員長(シンガタ)は「何度決選投票を繰り返しても上位に留まり続けたことから、グランプリにふさわしいとの確信を得た」と経緯を説明し、「若いクリエーターにとって励みになる、今年を象徴するようなグランプリ作品だ」とコメントした。
ACC賞は09年から、各部門のグランプリを贈賞式当日に発表しているほか、テレビ・ラジオのゴールド(金賞)には順位を付けて発表している。ラジオCM部門のグランプリは、パナソニック「エコキュート」と日本ユニセフ協会「Happy Birthday for children」がダブル受賞となった。
「湯葉と豆腐の店」と掲げる梅の花のCMは、わけあり風の男女が歌で掛け合いを演じるコミカルなもの。同社の梅野重俊社長は、狙っていた男性客の取り込みは成功したとしながら、「女性社員からの前評判を聞くとほとんど反対の声で、実際に放映開始後はクレームが多く来た」と明かし会場を沸かせた。
ACC創立50周年を記念して新設され、CMを含めたキャンペーンの戦略や効果を評価する「マーケティング・エフェクティブネス(ME)部門」も発表され、7点のノミネートの中からキリンビールの「キリンフリー」発売キャンペーンがグランプリに選ばれた。アルコール度数「0.00%」のビール風味飲料として、酒を飲めない場面でもビールに近い味わいが楽しめる商品としてドライバーらの支持を獲得。立ち上げ時には、高速道路のパーキングエリアで発表会を開催し、注目を集めた。同部門の審査委員長を務めた作詞家の秋元康氏は、「新しい市場をつくった。ゼロから1を生んだことが素晴らしい」と絶賛した。
贈賞式の後にはパーティーが開かれ、演技賞を受賞した俳優の北大路欣也と大森南朋、人気映画シリーズ「スター・ウォーズ」に登場する悪役ダース・ベイダーが登場し会場を盛り上げた。
佐々木宏審査委員長は壇上で、「日本全体が元気ないと言われるが、素晴らしい才能を結集させ作られたCMが、日本を元気にする力になっていると感じる」と強調した。
ACCの永田圭司理事長は、50周年の節目で新たに実施したME賞の新設やラジオ部門の審査方法変更、クリエーター殿堂の設立などを挙げ、「全体を通したテーマは『CMの力の再確認』だ」と述べた。