前回のコラムが好評だったので、続編を書くことにした。本連載がWebにも掲載されたことで、ツイッターなどの反応がストレートに来るようになった。これもまさにWeb時代のひとつの象徴と言えるだろう。
ちょうど前回分が掲載された11月24日、MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)がインターネット上での個人情報公開に関する意識調査を発表した。その結果によると、携帯ユーザーの9割は本名や写真の公開に抵抗感があるという(図表参照)。また、mixi(ミクシィ)では16.5%、ツイッターでは7.0%の人しか実名を公開していない(フェースブックのデータは母数が少ないので非掲載とした)。日本人はソーシャル上の実名でのコミュニケーションに抵抗があるということが裏付けられた形である。では、どうしてそのような傾向があるのか、また実名でコミュニケーションをするのはどのような場合かを考えてみたい。
ビジネスで人と挨拶するときを例に挙げよう。日本人はまず名刺を交換し[会社名][部署名][氏名]といった順番で紹介をするのに対して、海外では名前を言い、握手をし、相手の目を見つめて自分の存在をアピールするのが普通だ。
社交的なシーンではどうだろう。自分たちのグループで出かけ、他のグループとあまり交流することが少ないのではないだろうか。一方、海外では一緒に出かけても、その店であった人たちと交流しどんどん新しい関係を構築する傾向が顕著だ。このように、そもそも文化的に友人関係構築の仕方に大きなギャップがある。ただし、このような傾向は若者を中心に少しずつ変わってきていると筆者は感じている。
日本では、ソーシャルメディアは発達していないということが言われているが、実は逆だと考えている。携帯電話のアドレス帳で、メールを中心としたクローズドな実名ソーシャルネットワークが存在しているのが日本である。海外では文字数の制限があるSMS(ショート・メッセージ・サービス)が中心で、あまりコミュニケーションに使われていないが、日本では表現が豊かなメールでカメラ内蔵による写真もコミュニケーションの一手段として使われている。フェースブックやツイッター、ミクシィのソーシャルグラフが取り沙汰されているが、究極のソーシャルグラフは携帯電話のアドレス帳にあるといえる。
したがって実名でのコミュニケーションを前提としているフェースブックは携帯電話との争いになるだろう。しかし携帯電話は優秀なフィルタリング機能や決済機能なども包括しているので安心感があり、フェースブックはこの安心感を担保できない限り、日本での実名コミュニケーションには時間がかかるかもしれない。
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