「コネクション」視点は広告の拡がり方を変える
セグメンテーションがマスメディア/マスマーケティングにおける基本思考だとすれば、コネクションとはソーシャルメディア/コンシューマセントリックマーケティングにおける基本思考である。セグメンテーション思考における「点(=人)」はそれぞれの点の間での「つながり」は想定されない(例えばテレビCMは視聴者ひとりひとりに刺さることを目指す)。コネクション思考においては、「点と点のつながり」とその構成体としての「トライブ」に注目する。そしてそれぞれの「トライブ」が構成員を通じてつながっており、それが大きなソーシャルグラフを形成し、大きなコネクションとなっていることも。
私がかかわった『踊れ!ラランヌ!』(終了・ワコール)、『20XC -BEYOND THE MEMORY-』(継続中・東芝)というツイッター連携を行ったブランディングサイトについては、上記の考え方で行った。どちらのサイトもサイト体験の中でツイッターを通じてサイトのURL付きツイート(つぶやき)が発信されることになっている。両者ともサイト集客のための広告出稿を行うことなく、万単位の集客をツイッター上へのこれらのツイートによって集めた。特に後者『20XC』については、同社の他サイトから集客(自社サイト内のトラフィック)もないので純粋にソーシャルメディア上だけで集客をしたのだが、1週間で4万人ぐらいの来訪が確認されている。
『20XC』を公開した際にツイッター上で見受けられた意見として「こんなサイト、業界関係者しかみないんじゃないの?」というものだった。しかしこれこそが狙い。業界関係者のツイッターアカウントのフォロワーは果たして業界関係者だけなのか? ということ。このあたりがソーシャルグラフを理解しているかどうかの分かれ目。先に書いたように、ある人物があるトライブだけにしか属していない、なんてことはないわけで、そこから業界外の人にも拡(ひろ)がっていくことを想定していたのである。だからこそ逆に「業界関係者で注目される」というのは「広告業界トライブ」から他のトライブへの派生のために非常に重要な要素だったのだ。
現在でも『20XC』は全く広告出稿を行っていないにもかかわらず、毎日サイト来訪者がいる(その模様は、ツイッターの検索機能を使ってこちらで見ることができる)。だれかがつぶやき、だれかがそれを目にし、また他の人を連れてくる。こうした集客構造の設計を行うためには、サイト自体のコンテンツの良し悪しだけを考えていても不可能。マーケティングがセグメンテーションだけでなく、コネクションへと変化しており、それが新たな情報流通パイプとして巨大なソーシャルグラフ内に作られているのだ、と理解していなければならないのである。