AR広告の第一人者が語る拡張現実のお話:川田十夢(第2回)

「斬新が宿るとは? アイデアの遠心力と求心力」

川田十夢(AR三兄弟)

ARに限らず、自分の企画を客観視するために使っているモノサシがある。それは、「そこに斬新が宿っているのか?」「アイデアに求心力と遠心力は備わっているのか?」というものだ。今回はこのモノサシに留意しつつ、僕らの広告事例を紹介しよう。

「東のエデン×AR三兄弟」というシリーズAR広告を企画・開発したことがある。アニメーション作品の中でしか存在しないシステムを現実に作り出し、さらにAR三兄弟ならではの新機能(ARフライヤー)をうっかり組み込んだという見立ての広告だ。架空のシステムを実体化することによって、誰もが現実で物語に触れることができた。キャラクターグッズなどではなく、「システムを現実に移植する」というこれまでにない斬新なアプローチを与えることで、広くこの映画に内在する魅力を伝えるに至った。

劇場の拡張にも挑んだ。上映前に「携帯電話の電源はオフに」とアナウンスされるのが常の映画館で、僕らは「携帯電話の電源はオンに」と前置きした。観客は思い思いの言葉で、感想を入力。その言葉はスクリーン上で可視化され、観客の言葉と物語が一体化し、かつてないコミュニケーションが生まれた。劇場の拡張に用いた装置は、DVD特典としてパッケージ化されるまでになった。

一連のアイデアは、関係者達を動かす求心力と劇場の拡張や、パッケージ化に至る遠心力が備わった結果、大きな成功を導いた。

かなりの精度を誇る二つのモノサシ、あなたも使ってみては?(「宣伝会議」2011年1月1日号から)

※毎月1回掲載(全4回)、次回は2011年2月1日掲載予定

(かわだ・とむ)
未来開発プロダクション ALTERNATIVE DESIGN++ 主宰。ARを実体化する「AR三兄弟」として、国内外のAR広告を数多く手掛ける。『AR三兄弟の企画書』が絶賛発売中。Twitter IDは「cmrr_xxx」。

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