星に願いをかけるとき、
人に差別はありません
心に願う望みはすべて、
あなたのものになるでしょう
かの有名なディズニー映画「ピノキオ」の主題歌「星に願いを」である。世知辛い世の中、僕らは気が滅入ることも多いが、そんな時こそ、夢や理想を持ち続けようではないか。思いは叶う。そのためには、まずは夢をあきらめないこと。なんたって、星空の下では皆、平等なのだから――。
そんなウォルトの思想が通じたのかどうかは分からないが、最近、プラネタリウムが再び脚光を浴びている。昨年6月、7年間にも及ぶ航海から帰還した小惑星探査機「はやぶさ」のブームも手伝い、全国各地の200余りのプラネタリウムに人々が押し寄せている。
昨年11月には東京・渋谷に、2001年に閉館した五島プラネタリウム以来9年ぶりとなる「コスモプラネタリウム渋谷」がオープン(注)。最新式の投影機と全天周デジタル動画投影システムを備え、「はやぶさ帰還編」のドキュメンタリーを流したこともあり、チケットは連日、完売状態が続いている。
変わり種では、その1カ月前の10月、羽田空港国際線ターミナル内にオープンした、世界初の空港内プラネタリウム「PLANETARIUM Starry Cafe」がある。店内では4000万個もの星空が楽しめ、ただでさえ見物客で賑わうターミナルで、連日2時間待ちの人気だとか。
また、六本木ヒルズでも“3Dウォークスルー”で星空を楽しめる「スカイプラネタリウム」が期間限定で開催中である。既存施設の改修も相次いでいる。首都圏だけでも、昨年は世田谷区立教育センターと五反田文化センターのプラネタリウムがリニューアル。今や学校関係の見学者だけでなく、若者たちのデートにも使われている。来年には、あの東京スカイツリーの施設内に、最新鋭の機器を備えた「コニカミノルタTOKYOプラネタリウム」がオープンする。
なぜ、これほどプラネタリウムが脚光を浴びているのか。
昨年の「はやぶさ」の活躍がけん引しているのは間違いないが、施設の計画はその前からある。実は、入館者数で見ると2000年以降、増加に転じており、プラネタリウムのブームは静かに進行していた。それに「はやぶさ」が追い打ちをかけた形である。
冒頭でも述べたが、世知辛い世の中だからこそ、人は未知なものに惹かれるのではないだろうか。最新式の投影機が映し出す天空は、もはや現実のそれと変わりない。人々はリアルな宇宙を疑似体験することで、未知なもの――未来へと思いを馳せているのではないだろうか。
夢を持ち続けることは、悪い話ではない。未来は、「思い」が形になったものである。
(注)「コスモプラネタリウム渋谷」は、渋谷区文化総合センター大和田(同区桜丘町)内にオープンした。かつての五島プラネタリウムがあった場所とは異なる。
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