弾圧下の人々を鼓舞するITツールの台頭で世界は激変
23年も続いたチュニジアの独裁政権が最近崩壊した。国民はもちろん、政権を担っていた人々もこの事態を1年前まで全く予測していなかっただろう。独裁政権は民衆の敵対的民意を表面化させないよう「ツイッター」の閲覧・利用を禁じていた。しかし、急激に台頭してきたSNSのフェースブックについては注目していなかった。
フェースブックは、実名の登録を原則としており、そこでの記載は本人の真実の吐露と受け取られることが一般的である。その吐露は多くの民衆の間で評価され、一定の期間内に支持、非支持が表明され、支持が多ければフェースブックの中で民意が形成される。
さらに、フェースブックの強みは動画の掲載が可能で、通常外部に流出しない国内の鮮烈な弾圧シーンが生々しく国内外に閲覧されたことが政権崩壊のきっかけとなった。
その後も大規模反政府デモの開催などがフェースブック上で呼びかけられたり、その結果が報告されるたびに民意はより強く形成されるに至った。
アラビア語と英語で24時間放送されているカタールの衛星テレビ局「アルジャジーラ」も、フェースブックの動きが活発化する中で、そこから流出される真実を次々に公表し、チュニジアで起きている事態は中東地域において「現実の危機」と認知された。
現在、その影響は拡大し、イエメン、エジプト、アラブ諸国の強権体制に対する批判の渦となって、フェースブック内で民意を力強く形成しつつある。
1980年代はラジオが、1990年代は携帯電話が、2000年代は2ちゃんねるのような掲示板などが、そして現在はウィキリークス、フェースブック、ツイッターなどが時代のうねりの最先端で活躍している現実がある。
しかし、フェースブックのようなコミュニケーションツールがこれほどまでに効率よく多くの関係者に情報を伝達し、しかもそれを意図的に伝播させることが可能となった場合、攻撃の対象となったターゲットは、その内容の是非にかかわらず大変な脅威となるだろう。
これらのITツールが利用者の善意に従い、適切かつ適正に運用されることを期待したい。
白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
- 第10回 「『噂』と『事実』の垣根が崩壊寸前」(1/20)
- 第9回 「2ちゃんねる、ツイッター、ユーチューブ、BSチャンネルが広報の表舞台へ」(1/13)
- 第8回 「デジタル社会における『人』の役割」(1/6)
- 第7回 「木曜深夜『魔の時間帯』に震える!」(12/16)
- 第6回 「従業員を語り部(かたりべ)にするCSR戦略」(12/9)
- 第5回 「グローバル・ローカリゼーション」(12/2)
- 第4回 「先進ITツールに乗り遅れるな!」(11/25)
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