「広告」の役割はひとつだけではない
広告が貢献する世界には、「デマンドジェネレーション demand generation」と「リードジェネレーション lead generation」の二つがある。前者は「知りたい」や「欲しい」を生み出すことであり、後者は見込み客を呼んでくることである。検索連動型広告が得意なのは後者である。もっとも、広告の世界で実は大きなマーケットであり、多くの企業が望んでいるのは、「すでに買いたいと思っている人を集めてくる人」以上に「買いたいと思ってくれる人」を増やすことなのだ。
この「欲求を生み出す」という広告の目的がマスメディアをはじめとするブランド露出に貢献するメディアに期待されることであり、単純にマス広告とネット広告を「広告効果が取れるうんぬん」で比較するには意味が無い。それぞれの広告メディアの果たす役割がちゃんと設定されないまま「広告効果」を語るのは本当に無意味なのだ。
とりわけ検索連動型広告は「興味関心・欲求が生み出された後」に効く広告手法なのであって、それをさておいて「CPA志向」になってしまうと、そこには焼畑農業しかない。なぜなら、その検索キーワードを検索してくれるような環境づくりに自分たち自身が努力しているのではなく、他人が産み出してくれた「検索する人々 indender」のおこぼれを預かっているに過ぎないからだ。ニーズが顕在化したところに広告を出せるようになった、ということなのであって、ニーズはいったいどうやって起こしたのかを考えずにいられるからこそ、実はマーケティング脳の思考停止に陥りやすい。
「検索」がなぜ起きているのかに立ち返る
前述したような費用対効果に厳しそうなテレビ通販・雑誌通販をやっているところがなぜ当初、検索連動型広告に積極的でなかったか、その理由はもうわかるだろうか? このような広告主は、それらのメディアを通じて、Attention(注意)>Interest(興味・関心)>Desire(欲求)>Conviction(確信)>Action(購買) の全てを行っている。通販業界は実はもっとも「デマンドジェネレーション」に強い業界なのだ。一方、検索連動型広告の世界は他人のフンドシの結果の効果なのに、未だに「効果の高い広告」としてとらえている人々が多いのは残念で悪しきことだと思う。
なので検索連動型広告を使うとき、プラニングするときはぜひ考えて欲しい。いったいなぜ「検索」という行動が起きているのかを。それが検索連動型広告/検索という情報行動を理解する上でもっとも重要なことだから。
高広伯彦の“メディアと広告”概論 バックナンバー
- 第13回 広告主が求めているのは、代理店の新しいメニュー(2/21)
- 第12回 グーグルから学んだこと――広告ビジネスのイノベーション、そして広告人としての個人的興味:3(2/7)
- 第11回 グーグルから学んだこと――広告ビジネスのイノベーション、そして広告人としての個人的興味:2(1/31)
- 第10回 グーグルから学んだこと――広告ビジネスのイノベーション、そして広告人としての個人的興味:1(1/24)
- 第9回 消費者行動の再考--コンテクストプランを考えるうえで(1/17)
- 第8回 メディアの「エンゲージメント」を活かすという視点(1/11)
- 第7回 注目すべきは従来メディアのリノベーション――メディアが本当に変わるのは、これから10年(1/4)
- 第6回 B to Cのマーケティングは、B into Cのマーケティングへ(12/20)