ストリーミングでの番組視聴、米国で先行
皆さんはテレビ番組を生で見られない場合にどうするだろうか。一つの選択肢は、録画することだと思う。最近はVHS、DVD、ブルーレイ、ハードディスクと方法も多彩になってきている。しかし、そのためには事前に番組を把握して準備しなければならない。放送予定が変更して急に見られなくなった場合や後で見逃した番組がわかった場合には対応できないのである。
もうひとつの方法として、インターネットで見ることが考えられる。米国では特にこの方法が活発になってきているようだ。
レンタルDVD大手の米ネットフリックスの2010年度の売り上げは、前年の16億7000万ドルから21億6200万ドルへと3割近く向上したそうだ。そして大半のユーザーは昨年まで主流のDVD宅配レンタルではなく、インターネットのストリーミング経由で映画やテレビ番組を視聴したという。ストリーミング事業は送料がかからない分、収益性が高いということだ。有料ストリーミング専門のHulu(フル)も昨年の倍以上の収益を見込み、収益の黒字化を果たしたという観測がされている。
米国に続いて、日本でもテレビ番組の活用が始まっている。NHKは自社の見逃し番組の有料ストリーミングサービス「NHKオンデマンド」を提供している。ここでは放映直後から番組の見逃し視聴を番組単位、あるいは期間内は見放題の米国有料視聴と同じような料金プランで販売している。またNHKでは過去の番組アーカイブをユーチューブ上に設置した「NHK番組コレクション」というチャンネルを設置し、累計動画再生が488万人(2月26日現在)になっている。
新ビジネスモデルの確立に期待
GyaO!ではフジテレビの人気番組「あいのり」が地上波からCS放送に切り替えた際に、インターネットでCSと同時に配信し800万回を越える再生を得ているということである。この取り組みは番組スポンサーと一緒にビジネススキームを組み実現したそうで、番組再生に際してはまずスポンサーのCMが流れる仕組みだ。
既存のテレビ番組をネットで流すにはそれなりの権利関係などの処理を整備する必要がある。そして、何よりも後で見られるということで、視聴率への影響が予想される。前述の「あいのり2」では視聴率が落ちてもWebでスポンサーが露出できるメリットがついていることより、良いスキームであると思う。スポンサーサイドもWeb視聴時に広告が流れれば、録画番組でCMをスキップされるよりは有効に顧客に接触できるとも考えられる可能性がある。このように本年は新たなビジネスモデルが整備され、TVストリーミング元年となるかもしれないと考える。
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