アプリを使った新しいビジネスモデル
佐藤圭太朗(博報堂DYメディアパートナーズ)
「アプリケーションを作るのではなく、ビジネスを生み出そう」。グーグルのCharlesYimが、アプリ開発者に対して行なった提言だ。スマートデバイスの普及によって、ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディア、更にはECやゲームまで、あらゆるビジネスが交錯する環境が整う。24時間、365日、生活者の30㎝以内にあるこの新しいデバイスは、これまでの携帯電話やマスメディアとは異なる新たなビジネスモデルを生み出す。
広告会社もまた、これまでの広告ビジネスだけではない、新たなビジネスモデルのデザインが求められる。中でも収益源であるメディアビジネスへの対応は急務。メディアプランニングやバイイングだけではない、BtoCも想定した媒体社との新しいビジネスモデルのデザインが必要だ。この変革期に、媒体社との共同事業による新しいビジネスに挑戦しているのが、位置連動型の電子書籍「Location Base Magazine龍馬伝」だ。最大の特徴は、龍馬伝の放送コンテンツと地元タウン誌から提供されたローカルコンテンツで構成されていること。テレビという影響力の強いメディアのコンテンツと、地元の精緻な情報を組み合わせることで、利用者に新たな行動を促す。そしてその行動が、新たなビジネスを生み出すという仕組みだ。「龍馬伝アプリで歩くツアー」という楽天トラベルと連携した業界初の旅行ツアー販売や、英語、韓国語、中国語の多言語対応による外国人向けの観光ガイド展開など、新たなビジネスモデルに挑戦している。またタウン誌とも連携することで、紹介したお店から掲載料を得るロングテールビジネスへの広がりも視野に入れている。
スマートデバイスのビジネスはアプリ内の広告や課金だけではない。メディアやリアルなマーケティングなど、広告会社の知見とアプリを組み合わせた新しいビジネスモデルへの挑戦はまだ始まったばかりだ。(「宣伝会議」2011年3月1日号から)
※毎月1回掲載(全4回)、次回は2011年4月15日掲載予定
(さとう・けいたろう)
1993年博報堂入社、2006年から博報堂DYメディアパートナーズ。事業開発プロデューサーとして、クリエイティブ×メディア×テクノロジーによる次世代エージェンシーモデルの開発に取り組んでいる。国内外の広告賞受賞多数。