ウェブを使った新たなビジネスモデル
資生堂は、国内化粧品事業において、2012年4月から、「これまで出会えていなかったお客さまとの接点拡大」および「当社契約店の活性化」をねらいに、ウェブマーケティングを強化するとともに、長年培ってきた店販化粧品ビジネスの経験を生かした、新しい化粧品のビジネスモデルを構築します。
新しいビジネスモデルでは、リアルな店舗網を有する当社の強みを最大限に生かしながら、付加価値型のウェブマーケティングを連動させ、新しいお客さまと出会う接点を最大化します。
付加価値型のウェブマーケティングでは、化粧品の販売(モノ)にとどまらず、化粧に関連する新たな体験(コト)提案を通じて、需要創出を図るとともに、リアル店舗と顧客データを共有することにより、お客さまの固定化促進のための取り組みを強化します。
具体的には、美と健康をテーマとしたサイトを新たに立ち上げ、化粧品に限らず異業種を含めたバーチャルなショッピングモール(仮想商店街)を開設するほか、有料・無料のウェブコンテンツも展開するなど、幅広い集客を図ります。
この新ウェブサイトで集客したお客さまに当社への関心を持っていただくため、現在の公式ホームページである「資生堂ウェブサイト」についても機能再編・強化します。
新公式ホームページにおいては、従来の当社の商品情報発信に加え、当社契約店を紹介する「店舗ナビ」機能、最適な商品をお選びいただくための「オンラインカウンセリング」機能、365日、24時間受注可能な「オンラインストア」なども新たに構築します。
これらにより新しいお客さまとの接点を拡げるとともに、新しく出会ったお客さまを当社契約店へと誘導し、契約店との連携により、お客さまの固定化促進のための取組みを図っていきます。
これらの一連の流れを通じて、国内化粧品事業の抜本的なたて直しを進めていきます。
資生堂のインターネットへの取り組み
09年にリニューアルした資生堂ウェブサイト
資生堂では、1995年に公式サイトを、また1999年には携帯電話用サイトを立ち上げるなど、早くからウェブを介したお客さまとのコミュニケーションを積極的に行ってきました。
09年には公式サイト「資生堂ウェブサイト」をリニューアルしたほか、近年では、情報の選択肢の増加にともないマス宣伝の効果が減少しつつある状況を踏まえ、既存メディアとインターネットなどを組み合わせた「クロスメディア」の取り組みも進めています。
ウェブマーケティング強化の背景
資生堂では、1923(大正12)年に、日本初のボランタリーチェーン制度といわれる「資生堂チェインストア制度」を構築し、安全で質の高い商品をより多くのお客さまにお届けすることを目指してきました。
このシステムは、高度経済成長期以降に確立した「マスプロモーション」手法と相まって、当社の市場優位性拡大に大きく貢献しました。
しかしながら近年、国内化粧品市場が成熟化する中、セルフ(非カウンセリング)チャネルの増大、インターネットの飛躍的発展による情報源の多様化などで、従来通りのマーケティング手法による効果も限定的になりつつあります。
一方、化粧品市場全体が成熟化する中でも、通販ビジネスは伸長傾向にあります。
通販の中でもインターネットおよびモバイル(携帯電話など)による通販は急拡大しており、今後もスマートフォンやタブレット(iPad など)の一層の普及にともない、さらなる拡大が見込まれます。
当社グループにおいても、子会社を通じて通販化粧品事業に参入してはいるものの、化粧品という商材の特性上、商品仕様以外の香りや使用感触などの要素も重視される傾向にあります。
同業他社の「通販化粧品ブランド」の中には、店舗販売を開始・拡大する流れもあり、通販チャネルのみでは成長性にある程度限界があることを示唆しています。
そのような環境下において当社は昨年、テレビ通販などのダイレクトマーケティングを積極的に行いながら、デパートやブティック(直営店)などの店舗販売で顧客の固定化を図るという独自のビジネスをもつ米国「ベアエッセンシャル社」を買収するなど、店販と通販の効果の最大化に関して研究を重ねてきました。
具体的な展開
ウェブマーケティングの強化
美容に関心が高いお客さまに向け「ビューティープラットフォーム(以下 BPF)」と称する新サイトを立ち上げます。
化粧品以外の業種も含めたさまざまな企業から出店者を募り、ネット上に仮想商店街を構築します。
新たなお客さまとの接点拡大は、国内市場が人口減により縮小に向かう中、多くの企業に共通する課題であり、さまざまな事業者(情報・商品・サービス)と顧客を結びつける場所として有効に機能すると見込んでいます。
当社の顧客組織「花椿 CLUB」メンバー数は558万人(09年度)ですが、「ショッピングモール」への出店が見込まれる企業が持つ顧客数を合算すると、3倍から4倍規模になることが想定されます。
対象となる顧客数が多ければ、販路拡大に有用であることはもちろんですが、ウェブ利用率は当社との接点が比較的手薄な10代~20代の世代が高いため、より大きな効果を得られることが期待されています。
BPFで業種を超えて「集客」したネット来訪者に、当社のファンになっていただくために、「資生堂ウェブサイト」の機能を再編・強化します。
当社が提供しているサービスをウェブ上でも体験していただくことをねらいに、問診による最適ブランドの紹介や使い方提案を行なう機能や、電話、ウェブチャット、テレビ電話などを通じて、お客さまに相応しい美容ソリューションを提供する機能を搭載する予定です。(一部サービスは365日、24時間提供)
また、「飲食店検索・予約サイト」のように、お近くの当社契約店や、各店舗でのサービス情報を検索するページや、このウェブサイトから直接、サービスを予約する機能などにより、実際の店舗への送客を行ないます。
また一部の契約店については、顧客データを共有することにより、 お店からお客さまに対するメールなどによるフォローや、サービス情報発信を適切なタイミングで行う、CRM(カスタマーリレーションマネジメント)を強化し、会員の固定化促進を契約店と一体となって強化していきます。
またITインフラが普及し、インターネットによる化粧品購入が一般化しつつある現状や、働く女性や高齢化などにより店舗での購入が困難なお客さまへの利便性向上を図るため、365日、24時間受注可能のオンラインストア(一部商品を除く)を構築します。
: 「既存店販ビジネス」の強化
「BPF」や「資生堂ウェブサイト」からの送客により、既存契約店の客数拡大を図っていきますが、その後の契約店のいっそうの伸張には、新たに来店いただいたお客さまにご満足いただき、固定メンバーになっていただくことが不可欠です。
2011年度からは、当社販売会社が契約店に対して「売場の魅力」や「接客・応対」の向上など、「お客さまに選ばれる店づくり」の実現に向けたサポートを徹底して取り組んでいくほか、本社専門店部に次世代経営支援の専門組織を立ち上げ、IT環境の整備や店舗進化のお手伝いをさせていただきます。