「ペーパーレス化」の契機となる可能性も
3つ目のトレンドは震災により生まれた新しい「節約型のエコマインド」であろう。津波による発電所の被害により東京電力管内では計画停電が実施されたことで、人々の心理や行動に与えた影響は大きいのではなかろうか。首都圏の皆さんも経験しているように、夜の街では省電力のために、最低限必要な電気以外は消灯されている。メディアでは家庭でできる節電方法が次々に紹介され、消費電力の少ないLED型電球が売れているという。世の中が「省電力・省資源型の消費」に変わってくると考えられる。これもやはりいわゆる「電子化」=「ペーパーレス化」という文脈によってインターネットが加速する要因になり可能性が高いと考える。
米国のネット広告団体IAB(Interactive Advertising Bureau)は今月13日、米コンサルティング企業プライスウォーターハウス・クーパースと実施した調査結果を発表した。それによると2010年の米インターネット広告市場は前年比15%増の260億ドルとなり、新聞の228億、ケーブルテレビの225億を抜いてテレビに次ぐ第2位に躍り出たという。
日本ではすでに、電通の「日本の広告費」で2009年インターネット広告(媒体費+広告制作費)が新聞を抜いており、これにより日・米ともにインターネット広告がテレビに次ぐ規模になった。実は日本ではまだ、純粋な「広告媒体費」は新聞(6396億円)がインターネット(6077億円)を上回っているが、2011年中に逆転することは間違いないと思われる。
また、特に今回の震災で製紙工場や印刷工場、インキ工場が被災し、雑誌などは休刊を余儀なくされるものが出たり(日本雑誌協会によれば計191誌もの雑誌が発行休止、または発行を延期するという)、日本インキ工業連合会は3月25日に「印刷インキの生産出荷に関する危機的状況について」というプレスリリースを出し、各種印刷用インキの利用制限を訴える状況である。これらのトレンドを考えると、この傾向はますます加速してゆくのではないだろうか?
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