つまり、必要としていたのは「個別の情報」であり、それを取得するために人々は通常利用していない情報ソースから必要な情報を取得することを覚えたといえるのではなかろうか。またそのツールとして携帯電話の販売数は大幅に伸び、ソーシャル・ネットワークによって情報の交換がより容易といわれているスマートフォンの販売比率が大幅に伸びてきたのであろう。
情報のニーズは個別の情報だけではない、マスコミで流れている情報だけでは充分ではないということが多く存在した。当初は被災地の情報や安否確認、電車の運行情報などである。筆者が独自にYahoo!の急上昇検索ランキングを調べたところ、震災前はほぼ芸能関係やテレビで紹介された内容であったが、震災後はその芸能情報が大幅に減り震災関連の情報であった。また特に3月21日に首都圏の浄水場の放射能検出の問題が出てからは、関連する情報を積極的に取りに行く、あるいは発信・交換する状況が見て取れた。このころになってくると充分な情報が提供されなければ、ユーザー自ら探しに行く体制が出来上がってきたと筆者は見ており、これはまさに情報リテラシーが向上してきた表れではないかと思っている。
個別ニーズ満たす情報提供が重要に
筆者の仮説がもし正しい(=生活者の情報リテラシーが向上した)のであれば、それはどのような変化をもたらすのであろう。まず前回のコラムでも書いたが、単純な訴求は今までのように簡単に受け入れられなくなる可能性がある。つまり、訴求するメッセージをサポートする事実、あるいは専門家によるエンドース(是認)が必要になってくるであろう。日本では比較広告が効きにくいと言われてきたが、それも変わってくるかもしれない。
もう一つは個別のニーズに合わせた情報の提供だろう。情報を取捨選択する能力が優れてくると自分に関係ない情報は排除するようになる。ソーシャル・ネットワークのような情報の渦が発達すればなおさらのことであるが、遭遇する情報量が飛躍的に増えてくると、自分と関係ないものは自然と淘汰されてしまうのである。そして、自ら必要な情報を取りに行くという姿勢をとらえるために、検索連動型広告などが再び脚光される可能性がある。少なくとも、それを前向きにチャンスととらえることができればこの国は再び大きく発展してゆくのではなかろうか。筆者の考えとしては、情報リテラシーの向上は、経済の国際化(や情報のネットワーク化)が進んでいる今、避けては通れない必要条件だからである。
江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー
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