鈴木健の「いま、自社メディアをどう活用するか」(第3回)

情報整理緊急時、企業の意志を表明できる自社メディア

鈴木 健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

いまトリプルメディア戦略のなかで自社メディアが最も重要ではないかと考えている。それを実感したのは3月に起きた東日本大震災のときだった。

緊急時にはすべてのメディアが公共的な報道となり、広告はおろか企業のコミュニケーションが一気にストップする。そのような状況で実際に消費者が目にする情報は広報でも広告でもなく、WEBという自社メディアだった。それが唯一の企業の意志や態度を表明する場所だった。

震災直後に対応が早かった企業は、WEBの担当者が率先して企業の広報部門より先にお見舞いや対応を自社ホームページに上げていたという事実を先日広告主との会話で知った。

企業を中心に置くのではなく、消費者を中心に企業の情報を組み直し「家」を作るのが今のWEB自社メディアであると前回述べたが、トリプルメディア上で広告(Paid)やソーシャルメディア(Earned)が相互に機能するためには中心となる「家」がしっかりしていない限りせっかく来たお客さんが何のためにそこに来たのかわからなくなる。

震災の例で言えば自社WEBにお見舞いを載せるのと公式ツイッターアカウントでお見舞いの発言をするのは内容が同じだったとしても役割が違う。つぶやきはずっと同じ言葉を載せるわけにはいかないが自社WEBには必要だ。いつ誰が家に来ても自社メディアでは同じ表明を伝える。つぶやきはその表明についての外からの声や会話には向いているが、それが可能なのはしっかりした「家」があるからである。

(すずき・たけし)
ニューバランスジャパンのマーケティング部長。国内外の広告代理店の経歴を経て、ナイキジャパンでブランドマーケターに転身、現在は現職でデジタルを含め広告宣伝PRを統括。

宣伝会議2011年5月1日号
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