3Dプロジェクションマッピングを使ったイベントも、完全に流行になってしまいましたが、同じ文脈にあると思います。問題は二番煎じがあまりに多く、ちゃんとこの技法を活かしたアイデアがほとんど存在してないところでしょうか。少し前に話題になった着せ替えリビングルームのコンセプトでさえ、元ネタがあるくらいですから……。
上述した例は、それぞれ手法は違いますが、アイデアの考え方は同じエリアにあることが判るかと思います。メッセージを掲げて人にそれを読ませる工夫をしたり、人に向かって大声で叫ぶような広告ではなく、人が本当に面白いと思うコンテンツや便利に感じるツールを作って、むしろ人の方からこちらに来てもらい、その体験を通じてブランドを知ってもらうような広告のあり方がドンドン主流になってきている気がします。
そしてこの流れはただのトレンドでは終わらないと感じています。このような広告とアートの融合を僕はとても面白く効果的だと思うし、もっともっとこういった領域のことを自身でもやっていきたい。DROWの仕組みだって、本当はちょっと応用すれば簡単に「広告」として機能させることができちゃいます。ビルボードに向かって投げれば絵を送れたり、ステージに向かっておひねりを投げたり、友達に向かってメッセージを投げたり……。興味のあるクライアントさんがいたら、いつでもご連絡ください。いっしょに考えましょう!
こういった「広告とアート」的なことを考えるときに決まって思い出すのが、広告ポスターで有名なフランスのグラフィックアーティスト Raymond Savignac(レイモン・サヴィニャック)がお亡くなりになったときに、オランダのDick Bruna(ディック・ブルーナ)が彼の死を悼んで書いた手紙です。友の死を悲しむ手紙の最後に彼は「Savignacのように、街角をミュージアムに変えてくれるようなアーティストがこれからも現れることを願っている」と結んでいます。広告ではなく、ミュージアム。悲しい内容なはずなのに、僕はこの目線に思わず笑顔になってしまいました。
川村真司「世界のクリエーティブ」バックナンバー
- 第9回 「海外アワード事情」(4/23)
- 第8回 「とある一日。」(4/9)
- 第7回 「海外エージェンシーで働くのに必要なモノ」(2/19)
- 第6回 「コピーライター+アートディレクター+?」(1/29)
- 第5回 「広告制作に新しいプロセスを」(1/8)
- 第4回 「広告制作×個人制作」(12/25)
- 第3回 「シンプルに」(12/11)
- 第2回 「不可能なんて、なんてことない」(11/27)