投稿情報も大手メディアの取材源
徐々に復興が進み自粛ムードが緩和してきたGWであったが、その間に日米のメディアで「情報の透明化」にかかわる大きなニュースが2つあった。
米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは6日、情報投稿サイト「Safe House」を立ち上げたと発表した。このサイトでは匿名で安全に文書などの情報を投稿できるようになっていると説明されている。これは数々の国家秘密級の文書を公開してきたウィキリークス(WL)とほぼ同様の取り組みであるが、新興の非営利団体ではなく既存の有力メディアが自ら手がけることで今後どのように波及するか見守りたい。
また、日本でも4日に朝日新聞がWLを情報源に、「在東京米大使館発など日本関連の外交公電をもとにした特集記事を掲載」した。インターネットから発生した匿名の投稿を従来のメディアが制度化し報道してゆくという大きな流れが始まったといえそうだ。日本には「2ちゃんねる」という匿名投稿サイトがあり、内部情報の提供が行われてきたのであるが、信憑性が低いとされその内容が報道されることはあまりなかった。
内部文書が公開されるなど、情報の透明化の動きが加速するにつれて、社会全体のコンプライアンス(法令順守)マインドが上がるのではないかと筆者は考えている。特に前2回の記事(震災後のネット利用拡大から見えてきた3つのトレンド、震災後の情報リテラシーが向上した背景とその今後)に書いたように、ソーシャルメディアの台頭そして特に日本では震災後の情報が不確実な状況を背景に、ネットユーザーの情報リテラシーが高くなってきていると感じる。これにより、企業や政府を含めた組織では、より早く正確に情報を提供することが求められている。マーケティングは新しい局面に突入する可能性がある。
従来のように商品やサービス(以下あわせて商品と呼ぶ)の特性を訴えるだけではなく、提供している企業の対応や姿勢が商品選定の上でますます重要になってきているのではなかろうか? 以前のコラムでソーシャル・ネットワークの特色は「見える化」であると紹介したことがあった。従来であれば商品や広告でしか見えていなかった“提供企業”があらゆる面で「見える化」されることによって、ますます消費者に評価されることになるのである。(次ページに続く)