日中韓首脳会議で見えてくる江戸時代流「踏み絵」の世界

日本のブランドは既に赤信号

人は思考が働くうちは、冷静に物事を判断できる。例えば、日本人なら福島や岩手に旅行に行くことは躊躇(ちゅうちょ)しても、京都や北海道に行くことには何の違和感も持たないだろう。にもかかわらず、中国や韓国の人々、あるいは欧米の人々が、日本全体が危ないとの「原発風評」に踊らされている理由は、その情報そのものが一つの危険なイメージや影響を持ち始めているからである。

2000年に起きた雪印乳業の病原性黄色ぶどう球菌集団食中毒事件では、「あの社長のいる会社の牛乳は飲みたくない」、「うちには小さい子どもがいるから少しでも懸念がある会社の製品は飲ませたくない」、といった声が挙がり買い控えが起きたが、実はこのような具体的なネガティブ感情はほとんど改善できる。

ところが当時、スノーブランドが崩壊してしまった理由は別のところにあった。すなわち、「雪印=怖い」という危険なイメージが存在したことだ。その危険なイメージは大衆の民意を形成し、まさに雪印を許し製品を買おうとする消費者までをも、「今頃まだ雪印を飲む人がいるんだ!!」と言わんばかりの目線で突き刺し、その買おうとする気持ちを萎えさせてしまうのだ。

現在、日本で起きている原発風評は、まさに「日本=怖い」のイメージである。「安全です」といい、「流通している以上、危険なわけがない」と政府が「食品の安全」を説明している一方で、震災後2カ月も経過して、「実は原発メルトダウンしていました」では世界的な信頼は、そう簡単に取り戻せない。

実際にこうなってしまうと、なかなか信用されない。雪印事件のときも何千人という社員が毎日毎日、被害者、取引先、関係者に謝罪し、信用を回復するのに何年もかかっている。その涙ぐましい一つ一つの行動はとても簡単に言い尽くせないものがある。(次ページに続く)

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白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

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