世界的な広告賞「クリオ賞」の第52回授賞式が5月19日、米ニューヨークの自然史博物館で開催された。日本勢の受賞結果は、13部門中5部門で銀賞5点、銅賞3点。デザイン部門では、多摩美術大学のオープンキャンパス告知広告でグッドデザインカンパニー(GDC)の水野学氏が銀賞を獲得した。授賞式に参加した水野氏に、授賞式やニューヨークを訪れての印象を聞いた。
――第52回クリオ賞授賞式の第一印象は?
日本の広告賞と比べると、規模がだいぶ違う印象を受けました。他の海外の広告賞の中でもかなり大規模な授賞式でした。なにより、以前より大好きだった自然史博物館での授賞式に嬉しくなりました。この博物館の迫力と完成度の高さを利用することで、賞に重みが加わったように感じます。
――ほかの受賞作や制作者たちの様子はいかがでしたか?
ほかの受賞作の多くは、「面白い」ものが多いと感じました。しかし(日本のデザイナーの多くは勘違いしているように思うのですが)、面白い広告が良いとされることは理由があると思います。日本とは異なり、多様な人種が住む国も多く、中には、識字率が低い国もある。そういった場合には、笑いで「縛る」必要がある、ということだと思います。海外の広告に対抗して、安易な考えで笑いに頼るのは良くないと、あらためて感じました。
――多摩美術大学の作品は海外クリエイターにどのように受け止められたと思いますか?
日本の広告やデザインは、海外でも非常に注目されています。特に、印刷技術や加工技術に至るまで、とても丁寧に作られたグラフィック作品には興味を持っているようです。受賞作品の多摩美術大学の広告は、コーポレート・アイデンティティーの部門で評価されました。ブランディング、広告、デザインの3点ともに評価を受けたと言われました。
――ニューヨークで目についた広告はありましたか?
僕は、広告は、大貫卓也さんの広告が世界最高レベルだと思っています。それを超えるような広告は見当たりませんでした。日本の広告のレベルや、デザインのレベルは、高水準であると思います。しかしながら、アルファベットが持つ整然としたリズムには、いつ見ても感嘆してしまいます。表音文字であるがゆえに持つことができる、単調なリズムがかっこいいのだなと感じます。
――街や生活の中にあるデザインを見て、どのように感じましたか?
海外に行くとあらためて日本のデザインは素晴らしいと思います。しかし、国が関わるような大きな規模のデザイン(例えば、大規模建築など)に関しては、海外、特に欧米のデザインは素晴らしいなあと感じることが多いです。橋などは、いろんな色や形で作られているニューヨークに対して、日本では画一的なデザインになりがちだと感じます。