LikeよりShareを重視。ファンの購入意向は10倍、実際の消費は倍以上に
次に「リンクド」であるが、これは文字通りリンク、つまり何かとつながっているということである。まず何よりもキャンペーンは消費者のニーズとつながっていなければならない。これは従来日本でも実施されているクロスメディア施策、「続きはWebで」や「検索」といった手法もこの中に入るであろう。消費者はあらゆる媒体で情報をやり取りしているので、一つの媒体で完結せずに他にも波及しなければならない。つまりそのコネクションプラニングにはあらゆるメディアのノウハウを結集しなければならないのである。
例えばVCに検索窓をいれ、その検索からSEM/SEOを通じホームページへ誘導し、ホームページにあるソーシャルリンク:Like(いいね!)ボタンやツイッターボタンから内容がソーシャルにシェアされるという具合である。したがって今後のプラニングにはマスメディアのみならずインターネットやソーシャルメディアも含めた個別のそしてその組み合わせの深い知識が必要になるのである。
このようなリンクではフェイスブックのLikeボタンを押されるよりは、他の媒体に広めるShareという行為のほうが貴重だという。というのもそのほうが消費者の関与度合いが濃く、その消費者のソーシャルグラフにより広く波及すると考えられるからである。日本コカ・コーラでも独自にソーシャルメディアに情報を拡散できる“Happy”と“Share”ボタンを設置しており、消費者が情報や意見を拡散しやすくしている。クラーク氏が明かしたところによると、まだまだ初期のステージではあるが昨年末に英国とコロンビアで行った調査によると、ファンと呼べる人はそのブランドの購入意向が10倍高く、実際の消費も2倍以上あったという。
このようなリキッド・アンド・リンクド戦略の成功例として、クラーク氏は昨年のサッカーワールドカップでコカ・コーラが実施したキャンペーンを挙げている。まずはキャンペーンのコア・クリエイティブアイデアにあわせて、ゴールした後のパフォーマンスを取り上げた“What’s Your Celebration”というものを実施し、ユーザーが自らの喜びを表現することをあらゆる接点で展開しCelebration=Coca-Colaという構図を作り上げた。また“Wavin’ Flag”という歌をキャンペーンアンセムとして世界的に展開し、さらに日本など数カ国ではその国のアーティストとコラボレーションを行い、ローカライズしたのである。人々はワールドカップならではの喜びと曲をそれぞれの国のワールドカップの思い出と結びつけたのである。これはユーザーが自由に解釈し表現でき、あらゆる媒体で展開可能な、そしてどんどん広がってゆくキャンペーン正に「リキッド・アンド・リンクド」であったと言えるだろう。
次回はコカ・コーラで言われている4つのメディア:Owned Media, Earned media, Shared Media, Paid Mediaの定義とそれらを持つ意味、活用方法などを紹介したい。
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