カオスかインタラクティブか
鈴木 健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
デジタルテクノロジーの進化はメディアの枠組みを広げ、企業と消費者を簡単につなぐことを可能にした。同時に消費者は自分で情報を発信する手段を得てメディアとなった。これまで企業→メディア→消費者という一方向のつながりだったが、それぞれが重なり合う輪が出来たことになる。
このような状況を、企業がカオスとして捉えるか、インタラクティブとして捉えるかによって自社メディアの活用は大きく変わる。カオスとして捉える場合は今まで以上に情報のコントロールが必要になる。特に企業側の情報やメッセージが消費者によってプリズムのように多方向に広がるソーシャルメディアの中では誤解や行き違いが多くなる。発信する企業はメッセージの出どころ(媒体社)をチェックするだけでなく、メッセージそのものが誤解を招かないよう徹底的にシンプルでわかりやすいストーリーを伝える必要がある。
インタラクティブとして捉えるならそれぞれの輪の重なりでいかに企業にとって有効な「会話」を作り出すかが重要。それにはコントロールではなく話題を喚起するインスピレーションと有意義な会話をリードする役割が求められる。
今後の自社メディアの在り方は、この二つのバランスを上手にとり、企業と消費者がそれぞれの価値を高めることができるかが課題になると思う。その意味で消費者との全てのタッチポイントがメディア。各メディアが独立しながらそれぞれつながることを前提に自社メディアネットワークを構築することが究極のビジョンだ。
- 鈴木健の「いま、自社メディアをどう活用するか」(第3回)「情報整理緊急時、企業の意志を表明できる自社メディア」
- 鈴木健の「いま、自社メディアをどう活用するか」(第2回)「マーケティング活用のための情報整理」
- 鈴木健の「いま、自社メディアをどう活用するか」(第1回)「WEBメディアの本質を問う」
(すずき・たけし)
ニューバランスジャパンのマーケティング部長。国内外の広告代理店の経歴を経て、ナイキジャパンでブランドマーケターに転身、現在は現職でデジタルを含め広告宣伝PRを統括。