長期化する原発事故や電力不足への不安などから、震災後の消費への意欲は全般的に下降傾向にある。特に、農畜産物などをめぐっては、これまでの常識にとらわれずに独自の判断を行う意識もうかがえる。その一方で、購入金額の一部を被災地支援に役立てるキャンペーンなど、「応援消費」にも一定の需要がありそうだ。
被災地への「応援消費」首都圏で活発に
消費のキーワードは「安全性」と「節電」――。震災発生約1カ月後の消費者調査からはこんな傾向が浮かび上がった。震災直後の過度の自粛ムードは改善されつつあるが、不要不急の買い物を控える傾向が依然として続いている。
首都圏の既婚女性に聞いた調査によると、野菜や乳製品について特定産地の商品の購入を避けているとの回答が1割弱(図1)。店頭に並んでいる時点で専門家の審査をパスしていると考えるべきだが、安全への対策をめぐっては「これまでの常識や法律基準にとらわれない」と自己防衛意識が高まっている(図3)。
買いだめ行動のきっかけについては、「店頭で商品が足りなくなっていたので」が最も高い値を示した(図4)。商品不足が解決することで解消される可能性が高そうだ。もっとも、買い控えの一方で被災地周辺の産品を選ぶ「応援消費」の機運も高まっている。男性よりも女性に高い傾向が見られた(図1)。
宣伝会議2011年6/1号
巻頭特集: 『風評被害の本質を考える』 より一部抜粋
【特集内容】
風評被害のメカニズム
- 消費者は極めて冷静に特定商品を避けている
―同志社大学 中谷内一也 - 震災で明らかになったメディアの特性と信頼度
―野村総合研究所 村上輝康 - 海外からの風評被害をどう克服するか
―フライシュマン・ヒラード・ジャパン 田中愼一 - 情報の「提供」と「取得」の新しいモデル
―GROUND 高松聡
人が情報を信じるとき~その発信、信用できますか?
- 意思決定の精度を上げるメディアの役割
―ジャーナリスト 三神万里子 - 人が“納得”する心理的・科学的メカニズム
―目白大学 渋谷昌三