ソーシャルメディアで勝負できる コピーライターの条件
菅付 僕は言葉の枝葉をつくる人は、多少は必要だけれど、ほとんどいなくていいと思う。大きな骨組みの言葉、考え方を作る人がいればいい。さらに広告というよりコミュニケーションのあり方を考える人は必要。だから東京コピーライターズクラブも「東京クリエイティブディレクターズクラブ」にしちゃえばいいんじゃないですか?
―過激な意見が出ましたね。
河尻 今日は菅付さん、ヒール役ですから(笑)。でも、いまの広告における言葉の役割を直視するために、この対談においてはクリエイティブディレクターとコピーライターを、とりあえず僕は分けて考えたい。言葉の職人としての「コピーライター2.0」みたいなものがあるなら、それは何なのか。
実はちょっと考えてきたんですけど、まず、ソーシャルメディアで勝負できること。Twitterのモチベーションがどこまで続くかはわかりませんが、ソーシャルメディアの流れは、しばらくは続くはず。で、ソーシャルメディアに対応できるコピーライターというのは、単純に言うと「おまえ、明日からカトキチツイート*3をやれ」と言われてできる人です。
菅付 あれは社員の人が書いているの?
河尻 ええ、もう辞められるみたいですけど。Twitter って言葉だけ抽出するとレベルが低いように思うんですが、そうではないんです。どういうタイミングで、どんなコンテクストに載せて、何を出すのかがものすごく重要。誰がいつどういう状況で発信するかによっては、「カルボナーラなう」みたいなどうでもいい言葉が有効な場合もあるわけです。それは考えようによっては面白い世界で、言葉はいろんな制度から解き放たれて、近代以前の豊穣さを取り戻すかもしれない。それと同時にほんとにチープな言葉の砂漠化が進む可能性もあるでしょう。
2 つ目は根本的なソリューションのアイデアを考えて、それを言葉でわかるように説明できる能力。3 つ目が、これだけ情報がある中で、いろんな場所からコンテンツを引っ張ってきて編集できる能力です。
菅付 非常に納得ですね。僕も河尻さんも編集者だから、キャラクターとしての、時代のアイコンとしてのコピーライターに興味を持つかどうかは大きな要素なんだけど、残念ながらそこが魅力的と思えるようなコピーライターはほとんどいないと思うんです。それに関しては、どう思いますか?
河尻 魅力的ですよ。でも、人が魅力的だから世の中にフィーチャーされるわけじゃない。
菅付 そう、優れた職人としてではなく、人として時代を代弁しているかどうかが大事かと。
河尻 コピーライターというもの自体がトレンドにならないと、個々にスポットライトが当たることはないかもしれませんね。
菅付 結果論ですよね。コピーライターだから注目されるのではなく、面白いことをやっている人がいて、それがコピーライターだった、という順番が正しいんじゃないですか。コピーライターだから注目される時代は終わっているから。
*3カトキチツイート…テーブルマーク「加ト吉」ブランドの公式アカウント。「おそれいりこだし」「ありカトキチ」など、同社の商品に絡めたダジャレツイートで人気に。
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