予測されている今年の猛暑にピークカット、計画停電だけで対応可能か!?

停止した原発

停止した原発からの放射能漏れはない。ニューヨークでは米東部時間の午後4時10分から3分間で、9つの原発を含む21の発電プラントがシャットダウン、一斉に停電した。原発の自動停止による放射能漏れは観測されなかった。

空港は混乱するも、4時間後再開

市内はすべての列車、地下鉄が運行を停止し、ケネディ国際空港など三つの空港も一時閉鎖されたが、4時間後には再開された。一部で離発着の遅れや欠航があって混乱した。再開された後も約3,000人の乗客が空港で夜を明かした。

道路は車と歩行者であふれた

道路などの信号機がすべて消え道路は大渋滞を起こした。地下鉄などを利用できなきなくなった多くの人々が路上を歩いていた。このため市当局はラジオを通じて人々に会社や自宅にとどまり、車の使用を避けるよう呼びかけた。

ニューヨーク証券取引所

ニューヨーク証券取引所の停電は14日の取引終了後10分後だったので混乱は起きなかった。15日は市場が開かれる前に電気が復旧したため平常通り取引が始まり終わった。

リーダーたちの素早い対応

大規模停電は2001年9月11日の同時多発テロを思い出させた。テロ再発または イラクの報復(サイバーテロも含む)の疑念もあったが、大統領、州知事、市長など指導者たちの素早い記者会見、「この停電はテロではない」といち早くコメントし、市民に平静を呼びかけたので、市民の不安はすぐに解消された。こうしたアクシデントが発生した場合、リーダーが市民の前に顔を見せ、明確にコメントすることの大切さを実証した。

企業が被った停電のリスク

企業は突然の停電でとまどった。帰宅難民化により従業員確保が困難となり、また、帰宅時の地下鉄・エレベーターの閉じ込めや犯罪または暴徒化に苦しめられた。いつまで続くか不明のために食品などの買い占め、買いだめが目立ち、冷蔵庫、冷凍庫の保存食品の腐敗が発生した。店舗営業については現実的な事業停止に追い込まれた。

今年の猛暑、果たして大規模停電は回避できるのだろうか?

全国でピークカットや計画停電が始まる。万一大規模停電が発生した場合、企業や従業員はどれだけ冷静に対応できるのかはシミュレーションを積み重ねているかによるだろう。

今のところ電力使用率は夜で50%台、昼間も70%台を堅持しているが、暑い夏が始まれば、いつピークに突入するかもわからない。むしろ前提を「いつでも起きる可能性がある」と考えていれば慌てずに対処できる。予測不可能な事態には、ときとして予め何を準備したかよりも、事態発生後どのように対処したのかの方が重要なことがある。応用力が試される夏になりそうだ。

【参考文献:北米大停電、山家公雄著】

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
もっと読む
1 2
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ