Consumer360から展望する米国のマーケティング事情

テレビとの連携に高い関心 「デジタル偏重」への警鐘も

米国でもテレビとネットの融合は非常に関心の高い内容と見られ、関連するセッションが複数見受けられた。その中で一つ大きく日本と違うと感じられたのはツイッターの重要性である。たとえば今ツイッターで流行っている内容を示すTrending Topicsというものがあるが、米国ではここに載ることが重要といった風潮があるようである。テレビでは多くのフォロワーを抱えている番組出演者が番組開始前や放送中にツイートすることで、Trending Topicsに出てくると番組の視聴に影響があるようである。実際に ニールセンの調査 でも、ツイッターユーザーの76%がテレビ局のサイトも訪問しており、番組の視聴率とツイート数にはかなり相関が見られるということだ。

また、米国のテレビ広告をはじめとする広告にはツイッターのハッシュタグ(#cocacolaのようにキーワードの前に#をつけて検索しやすくするツイッターの技術の一つ)を広告に挿入するケースが多くなってきているということである。日本では「検索窓」を入れる広告が多いのであるが、米国ではハッシュタグが主流になりつつあるようだ。また、モバイルを通じてフェイスブックがテレビと連動するようになれば逆に視聴が減っているテレビの視聴が再び増えるのではという期待もあるようである。

上記のようにデジタルへの期待が高い中、それだけに頼ってはいけないという声も多く聞こえた。確かにデジタルの活用は増えており、他の手段ではリーチできない消費者層も増えている一方で、デジタルではリーチできない消費者が多く存在することも否定できない。登壇した多くの流通系のスピーカーの多くは「テクノロジーではなく消費者を見失ってはいけない」と警鐘を鳴らしていたのが印象的で、とても本質をついたポイントであろう。

そしてリアルの店舗との融合という意味では個人的にはロケーションベースマーケティングとクーポンを組み合わせたアプリであるShop Kickというサービスに注目したい。このようなアプリで多くの消費者の消費行動に影響が出ればこの分野への投資が一気に高まる可能性があるからである。今後の動きに引き続き注目したい。

江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー
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江端 浩人(事業構想大学院大学教授)
江端 浩人(事業構想大学院大学教授)

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、2005年日本コカ・コーラ入社、iマーケティングバイスプレジデント。2012年9月から日本マイクロソフト業務執行役員セントラルマーケティング本部長。2014年11月よりアイ・エム・ジェイ執行役員CMO。2017年3月ディー・エヌ・エー(DeNA)入社。現在、同社執行役員メディア統括部長兼株式会社MERY副社長。

日本コカ・コーラ在職中は、同社が運営する会員制サイト「コカ・コーラ パーク」を開発し会員数約1200万人、月間PV約10億を誇る巨大メディアに成長させた。

日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会が主催する「Webクリエーション・アウォード」で、2010年度の最高賞「Web人大賞」を受賞。2014年に日経BP広告大賞を受賞。2012年4月に開学した「事業構想大学院大学」の教授に就任。日本マーケティング学会会員。

江端 浩人(事業構想大学院大学教授)

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、2005年日本コカ・コーラ入社、iマーケティングバイスプレジデント。2012年9月から日本マイクロソフト業務執行役員セントラルマーケティング本部長。2014年11月よりアイ・エム・ジェイ執行役員CMO。2017年3月ディー・エヌ・エー(DeNA)入社。現在、同社執行役員メディア統括部長兼株式会社MERY副社長。

日本コカ・コーラ在職中は、同社が運営する会員制サイト「コカ・コーラ パーク」を開発し会員数約1200万人、月間PV約10億を誇る巨大メディアに成長させた。

日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会が主催する「Webクリエーション・アウォード」で、2010年度の最高賞「Web人大賞」を受賞。2014年に日経BP広告大賞を受賞。2012年4月に開学した「事業構想大学院大学」の教授に就任。日本マーケティング学会会員。

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