調査データから判明する企業への大きな影響
日本経済新聞社によると、上場企業全体の震災損失は3兆1千億円。東証一部に上場する3月期決算企業の3社に1社が、東日本大震災に伴う損失を計上したとしている。その内訳は、約360社(全体の3割強)が1億円以上の損失、約100社が20億円以上の損失、約20社が100億円以上の損失を計上した。
東京商工リサーチは東日本大震災後にアンケート調査を実施し、その結果を発表している。その報告によれば、株式市場に上場する企業3,639社のうち、1,908社が回答し、そのうちの1,324社(約70%)が何らかの被災を受け、事業停止に追い込まれた企業は34%にのぼることがわかった。また、事業停止になった460社のうち295社が製造業であり、製造業への影響度がひときわ高かったことが確認されている。
また、倒産および経営破綻した一般企業数は6月末段階で200社を超え、阪神・淡路大震災後1年間に確認された144社を大幅に超える結果となっている。
一方、東京23区の中小企業を中心とした震災の影響については、回答社数の約90%が「影響を受けた」とし、そのうちの約80%が「売上・来店者数等の営業状況に影響を受けた」としている。また、意外にも建物(事務所、店舗、工場等)が被災した企業も約25%あり、東京においても建物被災が顕在化していたことがわかっている。
地震などの自然災害リスク分析サービスに強みを持つ応用アール・エム・エス社およびイー・アール・エス社によれば、東日本大震災の特徴として「地震動」(地震波の周期成分)を挙げ、阪神・淡路大震災では建物構造部分の崩壊が多く見られたことに比べて、東日本大震災では屋根瓦の損傷、古い壁の落下、家具の移動・転倒、生産設備の被害、設備配管の破損、設備機器の転倒・機能停止、外壁の脱落、照明器具・天井の落下、窓ガラスの破損・落下など非構造部材の被害が中心であったとしている。
さらに、震度5弱以上の揺れの継続時間は、阪神・淡路大震災では20秒であったのに対して東日本大震災では140秒を記録し、その継続時間の影響として、極めて広い範囲で液状化現象が発生し、特に関東地方でも浦安市、我孫子市などで激しい液状化が起き、局地的に大きな被害となった。
地震による損失額と財務諸表への影響
震災損失の内訳として、復旧費用や操業停止期間中の固定費等、棚卸資産の除却損、固定資産の除却損が損失計上され、純資産を大幅に減らした企業も少なくない。
さらに、日本経済新聞社によれば、直接被害に加えてサプライヤーが被災したことにより原材料や部品を調達できず損失を計上したり、供給先の停止により操業停止を余儀なくされた例なども多くあり、被災地に拠点がない企業にも影響を与えたことが確認されている。その中には震災損失額の約90%が固定費の損失となった企業も存在している。
通信環境への影響
地震、津波などによる各社の基地局の被災(運用停止)の障害原因の多くは、停電と中継伝送路の障害(回線障害)による影響であった。断線基地局では衛星回線・臨時無線回線での復旧や、損壊が激しい基地局においては移動基地局車などで復旧するなど、各社様々な緊急対応を行ったが、通信規制状況においては各社の対応に差が出たようだ。
多くの通信関連キャリアが一部もしくはエリアを限定して「通信規制」をかけていたが、イー・モバイル社は発信規制をかけておらず、音声・データ通信ともにほぼ不便なく、利用可能な状況であった。
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