口コミ拡大に貢献した“共感性” と“希少性”
今回の女子ワールドカップ決勝は王者米国対FIFAランキング4位ながら米国に未勝利の日本である。しかも日本は被災国で、試合終了ごとに世界から日本への応援メッセージを送っているのである。そこにはシナリオでは書けないドラマ性とそして何よりも“共感性”が高かったのであろう。大災害から復興を果たそうとしている日本に対して、世界中が共感し、その思いをツイッターに乗せてつぶやいたのではないだろうか。そしてそれはただ観戦しているよりも深い体験を与えるものではないかと思う。
そして共感性と同時に“希少性”もあったのではないか。なによりも日本は男女を通じて初めてのFIFAワールドカップ決勝進出、そして優勝である。そしてその希少性に関しては同じような事例が先日、TBSで行われた「歌の日」特番で見受けることができた。
AKB48やEXILE、SMAP、いきものがかりといった人気アーチストが多く出演するこの番組の放映時に人気のツイートにランキングされたのはドリームモーニング娘。(モーニング娘。のOGユニット)であった。他のユニットももちろん人気があるのであるが、メンバーは普段ばらばらに活動をしており、あまり同時に見ることはできない“希少性”があるのである。
このように“規模”“同時性”“共感性”“希少性”がツイッターに限らず、口コミには重要であると考えるのであるが、これにマッチしたメディアは正にテレビであろう。これは6月に米国のNielsen Consumer 360という会議に行ったときにも感じたことであるが(コラム「Consumer360でみた米国のマーケティング事情」を参照)、ツイッターの反応でテレビ番組のインパクト、つまり視聴率だけでない番組のパワーが計れるのではないかと考えている。市場には徐々にツイッターなどのソーシャル機能を搭載したテレビが普及してきているが、来年のロンドンオリンピックに向けてテレビとソーシャルとりわけツイッターがどのように発展してゆくか注目したい。
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