文:糸永洋三
社内ベンチャー&サラリーマン経営者という立場ながらも会社経営に携わって実感した経験・ナレッジ談、後篇です!
*前篇はこちらから
まったくの未経験から社内ベンチャーを始めてわかった10の大事なこと(前篇)
⑥審査員は、VCエンジェル? とことん説明&アドバイスをもらう
我々Media JUMPは、博報堂DYグループの「AD+VENTURE」なる社内ベンチャーコンテストから誕生した会社ですが、数回の社内選考をくぐり抜けるための準備としてがんばったことが、審査員への個別説明。今回のコンテストには博報堂DYグループ各社から40代前後のエースの方々が10人以上、審査員として参加されました。エースだけあって、さまざまな部門・領域で一旗あげた人ばかり。なのでビジネス信条、考え方、ポリシー、ビジョン、腹落ちポイントがまったく違っていました。当然、質問をしてくる方向もさまざま。
この状況に対して行ったのが「一人ひとりに会いに行き、審査員の疑問を解決する」という動き。審査員をエンジェル=出資判断をしていただけるベンチャーキャピタルの面々、と捕らまえて 〝口説き〟まくりました。ところが、口説きに行ったつもりが反対に、とても重要な示唆をいくつもいただくことに。結果として現状の事業構築過程においても非常に生きた指針、戦略になっていたりもしています。大感謝、です。
⑦現業時代からの思いが、「次のビジネス」へつながっていった
シンプルにいうと、コンテストがある「から」、新しい事業ネタを考えはじめたのではなかったということです。7年の営業時代を経てインターネットメディア担当を4年。担当させていただいたクライアント様へのメディアプラン提案、インターネットメディア・WEBサービス各社との広告メディア事業をベースとしたメディアプロデュース&人脈構築を日々推進してきました。
そんな日常の中でしたが、いつも「次に来る、インターネット領域におけるビジネスチャンスはどこにあるのか?」を意識して動いてきました。志高くアンテナを張り続けると、張ったアンテナが、さらに新しい領域の出会いを社内外に新しく生み出してくれました。自分が〝気になる〟いろんな業界の人に会い続け、あるいは仕事を通じて応え続けたことで培ってきた人脈が、いま「フル」に活かされているのだ、という実感があります。この感覚はパウロとも一緒です。〝親会社時代〟の経験をすべて、この新しいMedia JUMPに活かす時がきた! わけです。
⑧「攻め」だけでなく「守り」こそ重要。管理業務の重要性!
会社経営を始めてから痛感したこと、それが経営管理業務の重要性です。会社設立準備にはベンチャー制度の事務局や、博報堂DYグループの本社機能を十分に借りながらのスタートでした。管理を専任する人もいないベンチャーですから、計数管理、契約書審査対応、法務関連対応、アルバイト人事管理、数値事業計画アップデート、支払管理……他もろもろ、すべてを基本的には自分たちの仕事です。
外に向かっていく事業推進をがんがん突き進めようとすれば同時に、心情的にはちょっと面倒で後回しにしたくなる管理業務もドーンとやってくる。当たり前のことだよ!! と先輩経営者には怒られるところだと思いますが、社会人になって初めて管理部・本社系機能の存在意義、役割、ありがたさをリアルに身にしみて痛感している日々であります。現時点では業務の30%ぐらいが、守り=管理業務に当てているイメージです。会社を守るためにも、きわめて重要な業務であると認識も新たにしています。そして「勉強の必要性」も日々痛感しています(苦笑)。
⑨仮想ライバル≒目標を勝手につくる
現場で働いていた頃、競合会社の存在は常に意識していました。特に営業時代、競合プレゼンのたびに「相手はどんな提案をしてくるのか? 勝つためにはどうしたらいい提案ができるのか?」そればっかりを考えていました。
ですが今、起業をしてみると、「競合」についての考え方が大きく変わってきています。メディアそのものを事業とするMedia JUMP社にとっては、勝った負けたの競合関係ではなく、追いこしたい目標としての仮想ライバルを意識しています。我々が勝手に決めている仮想ライバルは、広告事業と自社メディア事業を両立し成功しているサイバーエージェントさんです。出来たてホヤホヤの当社がライバル視するなんぞ大変おこがましいですが、サイバーエージェントさんが持つ新規事業を生み出すための仕組み、チャレンジ精神みなぎる社風、若手を抜擢する人事など、しっかりベンチマークしなくてはならない、と思っています。
自社メディア事業を成功させることは、間違いなく博報堂DYグループ全体の活性化につながっていくと信じていますし、この仮説を立証したい。社内ベンチャーだからこそ、「親会社とのシナジー効果を前提とした事業」で成功する必要があるのだ、と自分たちを追い込んだ発言をしてみたりして(笑)。
⑩親会社への「愛社精神全開」!
新卒時、好きで好きで、入りたくて入った会社への愛社精神をベースとして、Media JUMPを立ち上げたことは、クサい精神論かもしれませんが実感です。博報堂DYグループ、次の50年に向けたビジネス形態を真剣にみつけるための戦いとして、の位置づけです。社内ベンチャーとして、親会社グループとの協業関係を作り、新しいシナジー効果を作り出していくことに全力を注力していきたい。
ビル内の一室を間借りし、会社として3カ月が経ちましたが、この思いは日に日に強くなっていきます。総合広告会社内に小さく生まれたベンチャーが、新しいWEBサービスを通じて広告会社にとっての新市場や、新しい広告商品、新規事業開発の可能性を拡げる。
Media JUMP、現在はフルタイム社員2人、大学生アルバイト1人、非常勤役員3人の小所帯でありますが、志は常に高く、前へ進んでいき、少しずつ大きくなって存在感のある会社に仕上げていきたいと思います。
関係各位の皆様、赤坂Bizタワーにお越しの際は、Media JUMP社にも是非お立ち寄りください!いよいよ来月、WEBサービスのオープンです。皆様ご期待ください!
社内ベンチャー奮闘記 ~新しい広告ビジネスを目指して バックナンバー
- 第13回 「もっとしなやかに、もっとしたたかに」(7/19)
- 第12回 まったくの未経験から社内ベンチャーを始めてわかった10の大事なこと(前篇)(7/12)
- 第11回 Webは足し算、アプリは引き算(7/5)
- 第10回 iOS5の衝撃から考えた。『コンテンツ>システム』@プラットフォーム(6/28)
- 第9回 「利用規約」って一体誰が読んでる? というか「コミュニケーション」として正しいのか?(6/21)
- 第8回 「グーグルの検索ボックスに『自分の明日の予定』と入れてみる」(6/14)
- 第7回 「時計の針」(6/7)
- 第6回 「Webサイトの右上って、誰のための一等地?」(5/31)