設立から1カ月、コカ・コーラ「ビジネスイノベーションセンター」の狙いと成果

実物大の画像を前にすると流通・小売から普段聞けない話が引き出せる

―――このセンターができて変わったことはどのようなことでしょうか?

設立から1カ月ほど経過し、複数の流通・小売のバイヤーの方々とここでディスカッションする機会がありました。その中で分かってきたことが、小売側の方であっても、店頭が抽象的になってしまっていることがあるということです。例えば、現場を経てバイヤーになった方でも、まさに現在、目の前にある売り場については、どうしても抽象的にならざるを得ません。

そこで、紙の資料やプロジェクター投影ではない形で、店頭、商品を検討することによって、「共に店頭を作っていくという発想になる」という仮説のもとで施設を設計したところ、思った以上に有効に機能しているという印象を持っています。

また、ここにいらっしゃる流通・小売の方とは、なんと言うか、店頭に関して互いに思わず話がはずむという感じです。これまで店頭に関する話をする際は、メーカーと流通の「商談」という形であり、あくまでメーカーと流通というそれぞれの立場で話していました。そのため、いくらショッパーインサイトのことを言っても、どこか上滑りしてしまうところがあり、本当の意味でお互いが一緒になって考えるというのは難しかったのです。

しかし、センターに来て5分くらいすると、そうしたメーカーと流通の垣根はなくなります。単なる商売の話ではなく、店頭について一緒に具体的に考えていけるようになります。もちろん来ていただいた以上は、考えるだけではなく、蓄積している店頭やショッパーに関する最近の発見に基づいた当社からの店頭提案も行っていきます。そうした提案を実物大の売り場を目の前にして行うことのリアリティは非常に大きく、議論の内容も具体的で立体的になります。

―――店頭について議論する内容の変化について教えてください。

私たちより、むしろ流通・バイヤーの方のほうが、売り場が好きですし面白さも知っています。従って、こちらから話をするというより、先方が次々と話をして止まらなくなるような状態になることも多いです。また、実物大で精細な店頭画像だからこその指摘や考えも聞けます。店舗オペレーションや、欠品状況など、普段とは全く違う角度から店頭マーケティングの話に入ってくので、私たちも通常の商談では得られない新たな発見をたくさんしています。

これが、企画書上でただ提案するだけだとそうはなりません。これまでの商談だと、店頭の状況を切り取って、ショッパーやショッピング体験というのを単なる数字情報や記号情報抽象化してしまうことが多くありました。しかし、このセンターがあるからこそ話が立体的になるし、自分たちが及びもつかない、知りもしなかったことがこの場で出てきて、本当に現実的な議論になります。

とはいえ、一方でグラフや数値というのも、ビジネスを進めるうえで大事であることは間違いありません。そこで、そうした参考資料を共有できるように、iPadを人数分整備して、すべてその中に資料を入れています。この場合、プレゼンターがiPadでページをフリックして次に進むと、ほかのiPadと同期しているため、すべてが同様に動くようになっています。

ただ、こうした数字や記号はあくまでも参考資料であり、戻るべきところは店頭とショッパー、そして什器や商品といったリアルなモノです。実物大に再現された画像を見ながら、商品の実物やベンディングマシーンに触れて飲めてということが、どれだけ議論の質を変えるか、ということを日々実感しています。また、ここを訪れていただいた方々も、終了後には「またやりましょう」とおっしゃってくださいます。「売り場がもっとこうなるのでは?」というイマジネーションが刺激される場になっています。

―――今後、どのようにこのセンターを活用していきたいとお考えでしょうか?

冒頭に申し上げた通り、このセンターはメディアであり同時に店頭について議論する場でもあります。そして、さまざまな機能を活用することで、議論が立体化し、小売・流通の方々の考えが自然に引き出され、普段なかなか聞けない意見が出てくる装置になっています。スタートして間もないですが、このセンター発でいろんなアイデアを出して、それを店頭で実現していきたいと思います。


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