消費者が安全性を自ら判断できる材料を提示、いわき“見える化”プロジェクト
福島県・いわき市が10月1日より、「いわき農作物見える化プロジェクト“見せます!いわき”」をスタートさせる。 福島第一原子力発電所の事故発生以来、「福島産」や「いわき産」の農林水産物は市場からの受け入れ拒否、消費者からの購入敬遠が続いており、同プロジェクトはこの状況の打破を目指すもの。テレビCMやラジオ番組、WEBサイトなどを通じ、土壌の放射線検査結果や検査方法、空間線量、さらに生産者の生の姿や想いを発信していく。
プロジェクトを担当する、いわき市役所・農業振興化・園芸振興係長の荒木学氏は「農林水産物の売上減は非常に深刻な状況。震災直後は、被災地を応援して下さる気運も高まっていたが、今は日常性を取り戻しつつある。この状況で、単に安心・安全を叫ぶだけでは、なかなか消費者の方たちの不安感を払しょくできない。そこで、安全・安心を消費者の方たちがご自身で判断していただくための材料として農作物はもちろん、土や水、大気の検査結果、いわき市の農業者の取り組みを発信していこうと考えた」と話す。
ターゲットとするのは、「安全性が心配なので福島産は避けるようにしている」と考えている人たち。「たとえば、小さなお子さんを持つ家庭など、判断材料を提示しても、どうしても購入したくない、と考える方もいるし、その人たちに福島産の農産物を手に取っていただくのは、難しい。そこで今回のプロジェクトでは、判断がつかないから福島産の農産物は買わないようにしているという人たちを対象に判断材料を提示することで、購入を促進していきたいと考えている」と荒木氏は話す。
4月から農産物が売れない状況に直面し、何か手を打たなければ、と悩んできたという荒木氏。いろいろと対策を考え実行するなかで、電通にいた学生時代の友人に相談をしたことから今回のクロスメディア型のプロジェクトの企画が生まれ、具体化していった。
「放射能の問題については、メディアに登場する有識者の見解も複数ある状況。消費者の方たちも、判断ができない状況だと思う。このプロジェクトは一見、遠まわりに見えるかもしれないが、本当の意味での信頼回復は真実を公開し、知ってもらうことからしか始まらないと思う。プロジェクトを通じ、見える化に取り組む姿勢を真摯に訴えていきたい」と荒木氏は話している。
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