ソーシャルメディアをいかに危機管理に役立てるか

「開かれた●●」という言葉自体が古めかしい死語

上場企業においては2000年代初めに、それまでの総会屋対策のための会社主導型・対決型の株主総会ではなく、株主と対話する「開かれた総会」という方法があたかも新鮮で特別なスタイルのように重んじられた。

その後、IT化が進み、ソーシャルメディアが登場すると、単に株主だけではなくあらゆるステークホルダーを巻き込み、しかもリアルタイムでオープンな対話が主流になった。「開かれた」という言葉自体が陳腐であり死語となった背景もそこにある。

PR活動に積極的な企業はこれをステークホルダーのエンゲージメント戦略に取り入れ、より効果的にターゲティングしようとしている。成功している企業も少なくない。お客様の声を聞き、顧客サービス、商品改良、業務改善などに役立てている。

しかし、不祥事や危機が発生したとき、ソーシャルメディアの活動領域は極端に狭められ、とても「開かれた」状態とは評価できないのが実情である。
 

放置することもリスクとなるソーシャルメディア対応

フェイスブックにしろツイッターにしろ経営者が個人として登録し、法人がオフィシャルアカウントを持った瞬間からリスクは生じる。過去においては、ファイスブックの創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏のフェイスブックページがハッキングされ、彼のページにはゴールドマン・サックスなど金融機関から資金調達に対する批判が掲載され、それを見たユーザーから500以上のコメントが付いたが、ユーザーはハッキングされたものとは思いもしなかった。

昨年問題となったメキシコ湾原油流出事件では、本物のBP社広報ツイッターアカウント(@BP_America)を差し置いて、偽広報ツイッターアカウント(@BPGrobalPR)が稚拙な対応にもかかわらずマスコミの目にとまり、Wired(ワイアード)、AdAge(アドエイジ)、英Guardian(ガーディアン)に取り上げられて短期間に9万以上のフォロワーを形成し、危機管理対応としては最悪の風評となった。危機管理の視点で考えれば、不祥事発生後は特に、類似アカウントの存在の確認、コンテンツやフォロワー数の推移などの監視が重要となる。法人のアカウントを有した場合は、「なりすまし」も含めて、それなりの覚悟と対応が不可欠であることを実証した悪しき事例となってしまった。(次ページへ続く

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白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

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