マスメディアと違う、インターネットコンテンツ作成時に悩む点とは?

インターネットで展開されるコンテンツ(広告を含む)を考えるときに常に悩んだり議論になったりするのが、「どの観点から考えるか」である。従来のメディアを活用した方法であれば露出される場所やフォーマットが決まっているのでブランディングの深さや消費者のインパクトを重視するのは当然であるが、インターネットの場合には単純なディスプレー広告でも色々なオプションがあるので迷ってしまうのではないだろうか? どのような場合に、どのような条件を優先するのがよいのか考えてみたい。

特定のターゲットにブランドを浸透させる

コンテンツの消費をある程度Pushできる、消費者が逃げにくい状況においてはリッチなコンテンツをぶつけることが可能であろう。その場合には、なるべくスクリーンのサイズが大きな動画と音声の組み合わせが理想である。15秒、30秒とテレビCMで見慣れているくらいの尺なら十分見せることができ、それ以上も状況にもより可能だろう。

具体的な掲載のシチュエーションとしては、あるページを開けると強制的に流れるジャック型の広告や映画などの前に見せる動画であったり、ゲームでよい結果を出したときの動画なども、このようなものが適しているだろう。その際には、そのコンテンツの掲出先のサイトの特性を活かした融合が図れることがベストである。さらには、「○○をご覧の皆様」のようなメッセージを入れるだけでも受け手への浸透や反応が大きく変わってくる。特にブランデッドコンテンツと呼ばれるものは有効であろう。これは掲出先の媒体のトーン&マナーに合わせてコンテンツを開発して、ブランドを浸透させる手法で、単に「商品がある」というものとは違う方法で存在することが重要である。

商品やサービスを認知させる

新発売やリニューアルなどで商品の認知を稼ぐためには、多くの人にリーチできることが重要になってくる。したがって各種バナー広告や有力なブロガーやツイッター利用者に掲載してもらうなどの手法が良いであろう。商品の認知は、基本的に接触の回数につれて増えるが一定回数以上の接触では認知率の伸びが止まってくるので、適正な接触設計をしないと無駄が多くなる。ただしブロガーなどインフルエンサーに関しては逆にあまり露出をすると信頼性が薄れる可能性もあるので注意したい。認知と接触に関しては同一媒体で接触した場合と、複数の媒体で接触した場合では必ずしも同じ効果ではないこともあることも注意せねばならないだろう。また、広告だけではなくソーシャルメディア上の広まりなども接触と捉えられるので考慮する必要があるだろう。

商品やサービスを理解させる

認知だけでなく「理解」させるためには、消費者に考えさせないといけないので、前のめりな姿勢を促すことが必要であろう。このようなケースでは消費者も参加できるコンテンツが有効であると考える。例えば、ゲームでその世界観や性能や実際のスペックを感じられるような仕掛けだったり、クイズで知識を問うたり、映像やテキストの投稿で自分とその商品・サービスとの関連を可視化してもらったりといった策が有効になるのではなかろうか。また、多くの情報を掲載する必要があるので情報量が限られた広告には向いていない。理想的にはホームページを回遊させることであるが、中間的な策としてはメディアとの編集タイアップもあるかもしれない。

情報の広がりを重視する場合

ソーシャルメディア上での広がりを人工的に起こすのは非常に難しいが、今までの成功事例で見ると、「面白いコンテンツを用意する」といった策が挙げられるだろう。かつて「なべ猫」「袋に飛び込む猫」「口パク」などといったコンテンツが多くの回数見られてきた。しかし、それらの中にはブランドが顔を出すことはあまり無いのが実情である。むしろ広告よりはリアルに展開するイベントなどのほうが広まる例が多いのではなかろうか?そしてその際に重要なのはリアルタイム性(臨場感)である。スピードの速いツイッターなどでは「今」何が起こっているかが重要であり、ナショナルチームの試合を生中継した場合にテレビが盛り上がるのはその理由ではないかと考えている。

消費者のアクションを重視する場合

プロモーションなどでは認知や理解もさることながら、まず、キャンペーンに参加してもらうことが重要になる。この場合にはシンプルに消費者がとるべきアクションとそれから期待される効果を明記することが重要であると考える。「今すぐクリックして自動車を当てよう!」といった内容や「会員登録して登録ポイントをゲットしよう!」などのプロモーションの誘導には大きな動画や、リッチなゲームは必要ない。そして、このアクション型は特に他の施策と相性がいいのである。例えばリッチなブランディングをした後にアクションを設定(?)することも出来、それなりの効果を挙げることが多いのである。

このように、目的によってコンテンツの考え方が幅広いので、皆さんも色々考えて試してみては如何だろうか。結局インターネットの最大の利点は、変更が容易であることなので、実行してみて改善点が見つかったら、すぐに変更するべきであろう。またそのためには、効果の計測もきちんと考えて設計しなければならない。

江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー

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江端 浩人(事業構想大学院大学教授)
江端 浩人(事業構想大学院大学教授)

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、2005年日本コカ・コーラ入社、iマーケティングバイスプレジデント。2012年9月から日本マイクロソフト業務執行役員セントラルマーケティング本部長。2014年11月よりアイ・エム・ジェイ執行役員CMO。2017年3月ディー・エヌ・エー(DeNA)入社。現在、同社執行役員メディア統括部長兼株式会社MERY副社長。

日本コカ・コーラ在職中は、同社が運営する会員制サイト「コカ・コーラ パーク」を開発し会員数約1200万人、月間PV約10億を誇る巨大メディアに成長させた。

日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会が主催する「Webクリエーション・アウォード」で、2010年度の最高賞「Web人大賞」を受賞。2014年に日経BP広告大賞を受賞。2012年4月に開学した「事業構想大学院大学」の教授に就任。日本マーケティング学会会員。

江端 浩人(事業構想大学院大学教授)

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、2005年日本コカ・コーラ入社、iマーケティングバイスプレジデント。2012年9月から日本マイクロソフト業務執行役員セントラルマーケティング本部長。2014年11月よりアイ・エム・ジェイ執行役員CMO。2017年3月ディー・エヌ・エー(DeNA)入社。現在、同社執行役員メディア統括部長兼株式会社MERY副社長。

日本コカ・コーラ在職中は、同社が運営する会員制サイト「コカ・コーラ パーク」を開発し会員数約1200万人、月間PV約10億を誇る巨大メディアに成長させた。

日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会が主催する「Webクリエーション・アウォード」で、2010年度の最高賞「Web人大賞」を受賞。2014年に日経BP広告大賞を受賞。2012年4月に開学した「事業構想大学院大学」の教授に就任。日本マーケティング学会会員。

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