電通総研では、東京大学大学院情報学環の橋元良明教授と共同で、オーディエンス(メディア等からの情報の受け手)について研究する「オーディエンス・インサイト研究所」を立ち上げ、活動を進めてきました。同研究所では、その一環としてオーディエンスの動画コンテンツに対する関わりや志向性に関する調査を実施しました。その結果明らかとなった主なポイントとして、以下の5点が挙げられます。
- PCでネット動画(*)を見る人は 5 割を超え、携帯/スマホでも 2 割を超える。
* 動画投稿共有サイト、放送局のオンデマンドサービスなどネット経由で視聴する動画のこと - パッケージソフトを購入するなどの「コレクション志向」は 30 代を中心に健在。
- 若年層は短く分割された動画コンテンツに魅力を感じ、他者との「感想共有志向」が高い。
- 普段見られないような「レア映像」への志向性が40代を中心として高い。
- 政治関連コンテンツとPCでのネット配信には親和性がある。
今回の調査から、ネットでの動画コンテンツ接触状況や、視聴者にとって親和性の高いコンテンツのタイプ・配信方法などが分かりました。放送・通信技術のさらなる進化、新しいデバイスの開発など動画視聴を取り巻くメディア環境は日々変化を続けています。電通総研では、今後も様々なオーディエンスに関するインサイトを深めるべく、研究を継続して参ります。
調査概要
調査目的
オーディエンスの各種情報行動の実態、動画コンテンツに対する嗜好や接し方、そして各種心理尺度等を調査し、それぞれの関連を統計的に検証する。
調査対象
東京都23区内在住の13才から69才までの生活者、計600人。10代, 20代, … 60代まで、それぞれ100名づつ。(各年代とも男女 50名づつ)
抽出方法
ランダムロケーション・クォータサンプリング
調査方法
調査員による訪問留置式調査
調査期間
2011年6月17日(金)~6月27日(月)
調査会社
株式会社山手情報処理センター
PCでネット動画(*)を見る人は 5 割を超え、携帯/スマホでも 2 割を超える
本調査では、まず、インターネット利用が普及した今日において動画コンテンツをネット経由で視聴する人がどのくらいの割合に達しているかを調べました。その結果、PCネット経由では、既に 5 割の人がネット動画を見ることがある(「よく見る」+「たまに見る」計)ことが分かりました。(グラフ1) 特に 10代においては、8 割もがPCのネット動画を見る時代となっています。
* ここで言うネット動画とは、動画投稿共有サイト、放送局による番組のオンデマンドサービスなど、インターネット経由で見られるあらゆる動画を含みます。
およそ 2 人に 1 人はPCネット動画を見る時代ということですが、モバイル(従来型携帯電話やスマートフォン)でのネット動画についてはどうでしょう。本調査結果からは、モバイルにおいても 2 割を超える人がネット動画を見ることがあることが分かりました。特にその傾向は 20 代において高く、46.0%が見るという結果でした。(グラフ2)パソコンに比べると画面サイズが小さいモバイルにおいても動画は普通に見られていることが分かり、今後さらにモバイルでの視聴シーンが拡大してゆく可能性が考えられます。
パッケージソフトを購入するなどの「コレクション志向」は 30 代を中心に健在
それでは、ネットで視聴する形でなく、コンテンツをパッケージで購入して見る視聴スタイルに関してはどのような状況でしょうか。「気に入ったテレビドラマや映画は、市販のDVDソフトで購入して揃えたい(コレクションとして所蔵したい)と思う」という項目において、「そう思う」と答えた人の割合が 30 代で
43.0%と最も高く、次いで 10 代・20 代の若年層でも高いという結果となりました。(グラフ3)
コンテンツを実物として購入し手元に揃えて鑑賞したいという「コレクション志向」は、今でも健在であることが分かりました。動画は、“ただ見れればよい”というだけのものではなく、“物として収集し揃えることに喜びを見出す対象”でもあるのです。
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