NYの秋、計算の秋。
ニューヨークは、秋があわててやってきて、なんだか急に冷え込んできました。朝は50°Fを切るようになってきました。寒いですよね…って!ちょっと、°Fって何よ?華氏って誰よ?アメリカ初心者の僕に、こうやっていろんな「単位」がワナをしかけてきます。アメリカで使われている「°F」すなわち華氏温度は、32引いて9で割って5をかける、というなかなか意地悪な計算で、やっと摂氏温度「°C」になります。50°Fは、(50-32)÷9×5=10、そう10°C。毎朝「寒っ!」と思うためにもいちいち暗算しないといけないわけですよ。子供の頃やっててよかった公文式です。
他にも、長さはインチ単位だし、距離はマイルだし、牛乳はガロンだし、肉はポンド。スーパーマーケットで買い物するたびに、単位変換計算で頭が良くなりそうです。紙もA4サイズじゃなくてレターやリーガル。リーガルなんて会社でどういう時に使うのかわからないけど、なんだか掛け軸みたいな細長い紙なんです。間違って日本語のコピー案とかを出力しちゃうと、なんだかムラムラと壁に貼りたくなります。ダメなアイデアも、ありがたい感じに見えてくるような。いろいろ違って困るアメリカだけど、これはいいかも…いやよくないかも。
さて、席がないところから始まったNY会社生活も、ダメコピーや没アイデアを貼れるようなすてきなスペースが手に入るなど、だんだん整ってきたわけですが、まだ慣れないのがお金と時間の計算です。あとでクライアントにフィーを請求するために、自分がどの仕事に何時間費やしたのかをちゃんと記録しておかないといけない。自分が使ったお金も案件ごとにまとめて、交通費や諸経費などをExpense Reportに書いてこまごまと出す。こういう時間計算や経費精算はもちろん日本でもあるわけですが(そして日本にいたときはたいていサボって、後で総務課の皆さんから叱られていたわけですが)、このオフィスには、手厚い日本の総務課のようなサポートは無く、おかげで毎日のように自分で計算をしています。クリエイティブも電卓必須です。
時間でフィーを計算する。これって、自分の時間を切り売りしている感じ?クリエイティブはアイデア勝負なんだから、3秒で思いつくときもあるし、1週間ずるずる考えてしまう時もある。仕事を時間ではかるのは変じゃない?と、最初はけっこう抵抗あったんですが、今は少しずつ、これは自分への価値付けのひとつなのだ、と思えるようになってきました。自分で時間とコストをコントロールする。そうすると、会社にやらされてる感がなくなって、だらだらした時間もなくなったような。仕事は忙しいけど、飲みに行く時間が作れるようになったかも。計算の手間は増えて面倒くさいけど、これもいいかも。そう、前向きに、前向きに。
いろいろ計算して申請した諸費用は、小切手になって返ってきます。小切手というのもどうも慣れないシステムで、この手書きの紙きれにお金と同じ効力があるのかと不安になるんですけど。毎月2回に分けて支給される給料も、今のところ手渡しの小切手でやってきます。でもなんだか手渡しって良いです。働いたぞ、って気がする。やる気が出ます。日本だと銀行振込だし、明細もオンラインになってたりして、効率的だけど、味気ない。日本にいたとき、給料はもらって当然、みたいな気になっちゃってたけど、自分の働きを計算したあとに手渡しでもらう給料は、まあ金額はどうあれ、うれしいよ。うれしいとやる気でるよ(働きに対してやる気がでないような給料だったら、きっとこっちの人は転職とか交渉するんだろうなあ。ちょっとうらやましい)。 (次ページへ続く)