日ハムによる東海大・菅野指名で「炎上コンボ」発動していた

27日に行われたプロ野球ドラフトですが、最大の話題となったのは、巨人・原辰徳監督の甥で、東海大学の菅野智之投手(22)の交渉権を「相思相愛」だったはずの巨人が獲得できず、「強行指名」した日本ハムが獲得したことです。

ここまではよくあることなのですが、なぜここまで盛り上がったのか。一つの理由は、兼ねてから「選択肢は巨人しかない。外れたらメジャーだ」と公言していた祖父の原貢さん(原監督の父・アマチュア野球界の重鎮)がスポニチによると

「日本ハムからは“(指名に)行きますから”というあいさつが一言もなかった。これは人権蹂躙(じゅうりん)。ドラフトにかけるなら、あいさつが両親のところに普通ある」

と憤慨した(最終的には菅野本人が決めるべきだと貢さんも言ったそうです)と報じられたことにあります。さらには菅野の父・隆志さんが「こちら側には何も話はなかったし、誠意を感じない」と発言したことも報じられました。

果たしてドラフトは「人権蹂躙」なのかで盛り上がる

この記事をはじめに見た時、「こりゃ燃えるぞ」という予感がプンプンしましたが、案の定、2ちゃんねるでは大盛り上がり。有力まとめサイト「痛いニュース」にもまとめられました。

菅野の祖父・原貢氏、日ハムの強行指名に憤慨 「これは人権蹂躙。指名前に両親に挨拶に来るのが普通」-痛いニュース

書き込まれた感想としては「そもそも挨拶断ってたんじゃねえの?」「ドラフトって人権蹂躙だったのか」「結婚かよ」などが挙がりました。ここでは「希望球団を強く言っていた場合、他の球団が指名するのはNG」「指名するなら挨拶しろ!」という「慣例」を菅野の取り巻きが主張しているのに対し、ネットユーザーは「ドラフトって欲しい選手指名すりゃいいんだろ?」という「ルール」について触れているわけで、両者はかみ合わないのですね。

この件はその後も各所で語られ、「日本ハムのスカウトが東海大学の監督に挨拶に行った時、42分遅刻した」と報じられた時も「読売系列の報知が報じたからこれは悪意を感じる」といった深読みが出たり、「なんで監督に挨拶へ行かなくちゃいけないんだ」とここでも「慣例」(なぜか本人ではなく監督に挨拶する)に反発する声多数でした。

なぜ、ここまで反感の声があがったのか3つの要素+おまけ

こうした「業界の慣例」VS「決まっているルール」といった論点に加え、今回ここまで盛り上がったのは「ネットでなぜか嫌われる主体」が絡んでいるからにほかなりません。以下3つの主体と【おまけ】があります。

【1】巨人
【2】原貢氏(76)
【3】この「慣例」をまかり通らせた「古い体質」の野球界
【おまけ】サッカーファンの存在

ネットユーザーが反感をもつ対象は「エラソーな権威」。【1】の巨人といえば、最大の人気球団だけにアンチが多いのはさておき、過去に1リーグ制を主張したり、FAで他球団の大物選手を大量に集めた過去がネットユーザーから反感を買っていました。

さらに、DeNAによる横浜ベイスターズ買収で「mobage」の文字が球団名に入る可能性が取り沙汰された際は、渡邊恒雄会長が「売名行為は許さん」といった趣旨の発言をしていました。こうしたこともあり、「また巨人関係者が勝手なこと言いやがって」の感情が今回も爆発したのだと思われます。

【2】については、あまり良いことばではありませんが、「老害」ということばがこれほどしっくりくることはない、というものがあります。確かに貢氏は球界の功労者ではありますが、前出渡邊会長と同様に、高齢者が若者のスポーツに色々と口出しをしており、さらには自らの意に従わないからと「人権蹂躙」という強い口調の言葉を言う。

若いネットユーザーからすれば、高齢世代は現在の団塊世代とも併せ、「勝ち逃げ世代」などとも揶揄される存在で、さらには「多額の年金もらいやがって」と反感を買う世代でもあります。

さらには「お前らがとどまっているからオレらに仕事も権限もないんだ」などとも逆恨みされる存在なわけですね。要は、「誰が言うかが重要」ということです。もし、菅野に小学生の純朴そうな妹がいて、その彼女が「お兄ちゃん、ジャイアンツに行きたかったのに、ちょっとかわいそう。お兄ちゃんがジャイアンツのユニフォームを着ているのを見たかったなぁ」などと言ったのだとすれば、ここまで叩かれなかったことでしょう。

叩かれるための最強コンボが発動されていた

【3】ですが、一野球ファンからするとドラフトに関し、昔から「栄養費問題」(ドラフト前から選手に接触し「栄養費」と題された裏金を渡す)があったり、数多くの選手が意中の球団から指名されず社会人野球に行き、貴重な数年間を最高レベルでプレイできないことなどを見ているだけに、この「慣例」にはとことん呆れていたわけです。

「またかよ…」の感が強く、さらにはここに「巨人」と「老害」が加わった最強コンボだったのです。というわけですので、企業の皆さんも「ネットで嫌われる存在」「ネットで好かれる存在」が一体何なのかを見極め、発言はしたいものです。スポークスマンが「誰か」は重要です。

ちなみに「【おまけ】サッカーファンの存在」ですが、これは、長年にわたる野球ファンとサッカーファンの抗争がネット上ではあり、今回の不透明なドラフトと高齢者が絶大なる権力を持っていることに対し、サッカーファンがここぞとばかりに「やーいやーい。相変わらずバカやってるな」となじることができ、さらに盛り上がったという側面もあることを意味しております。

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中川 淳一郎(ニュースサイト 編集者)
中川 淳一郎(ニュースサイト 編集者)

1997年博報堂に入社。コーポレートコミュニケーション局に配属となり、企業のPR業務を担当。2001年に退社し、『日経エンタテインメント!』のライターとして活動後、「テレビブロス」編集者になる。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などをしながら、2006年からインターネット上のニュースサイトの編集者になる。現在は編集・執筆業務の他、ネットでの情報発信に関するプランニング業務も行っている。宣伝会議「Web&ソーシャルライティング実践講座」「戦略PR講座」講師。肉巻きアスパラ大好き。

Blog: http://blog.goo.ne.jp/konotawake
Twitter: http://twitter.com/unkotaberuno

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1997年博報堂に入社。コーポレートコミュニケーション局に配属となり、企業のPR業務を担当。2001年に退社し、『日経エンタテインメント!』のライターとして活動後、「テレビブロス」編集者になる。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などをしながら、2006年からインターネット上のニュースサイトの編集者になる。現在は編集・執筆業務の他、ネットでの情報発信に関するプランニング業務も行っている。宣伝会議「Web&ソーシャルライティング実践講座」「戦略PR講座」講師。肉巻きアスパラ大好き。

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