ネットでウケるものは「人間」を理解しなくては理解できない

結局、ネットでウケるネタは「人間」の理解ナシには見切れない

さて、「ネットで何がウケるか」は5年経った今でも基本は変わりません。なぜかといいますと、「人間」のドロドロとした欲望・好奇心は時代がどう変わろうが変わらないからです。すなわち、インターネットで何がウケるかを理解するにはその大本である「人間」をまずは理解することが重要なのです。

人間が何に対して笑い、怒り、悲しむか…。インターネットに書きこまれるネタ、ウケるネタはそういった感情の発露です。インターネットがあるから、人間の感情が揺さぶられるのではなく、感情を揺さぶる「ネタ」をインターネットに載せることによって人間の感情が揺さぶられ、可視化されるのです。決してこの順番を間違えてはいけません。

ここまで「人間」について語ってきましたが、これからどうなるか――。今は、ソーシャルメディアで人々が容易に情報を発信できる時代となり、変わる可能性もあるという意見を最近聞きました。

ソーシャルメディア時代、ネットでウケるネタはどう変化するか

以前も発言を勝手に紹介した(すいません)コンデナスト社のデジタルカントリーマネージャーである田端信太郎さんが、若手PR担当者向けの講座で講師をやって下さった時の発言です。「これからどんなネタがネットではウケるのか?」という質問に対し、田端さんはこんなことをおっしゃいました。

「今まで通り、面白ネタやちょっとHなネタなどもウケるとは思いますが、ソーシャルメディアが普及すればするほど、『ジャズ喫茶理論』が当てはまるようになると思います。今まで、ニュースサイトのアクセスランキングを見ると、下世話なネタや芸能・スポーツネタが上位に来ていました。しかし、これは『誰がクリックしたか分からない』からなのです。

しかし、ソーシャルメディアで『どんな記事を読んでいるのか』を人々が発信し、個々人の嗜好が可視化されるようになると、下世話なネタばかり紹介するわけにもいかない。人は他人から良く見られたいのです。これはジャズ喫茶で、他人の目が気になって“センスの良い曲”をついリクエストしてしまう、ということに似ていますね。そういった意味で、ハイクラスな雑誌関連の記事や、IQの高そうな記事もこれからはウケる時代になるのではないでしょうか」

「AVビデオ」――う~ん、違和感が……

このように、ネットでウケるネタも変化の兆しが着実に出ている中、皆さんとはお別れするわけですが、最後に、恒例の記事紹介を。

どうして、そのAVビデオを手にとってしまったのだろうか?-アドタイ

これは、アドタイの「連載仲間」である野呂エイシロウさんのアクセスランキング1位を数日間にわたって獲得した記事ですが、私はどうしてもこの記事が気になって仕方なかった。いや、違和感といっても良いかもしれません。この記事タイトルを見て、さらには野呂さんのマジメそうなアイコンを見て違和感を常に覚え、その違和感を理解すべく何度も記事を読んだのですね。

結論が出ました。それは、「AVビデオ」という言葉です。「AV」だけで「アダルトビデオ」の意味があるわけで、「AVビデオ」は「アダルトビデオビデオ」です。この違和感、普段から「タイトルが90%」とおっしゃる野呂さんが読者に違和感を持たせるよう計算していたのだとすれば、私はヤられてしまったというわけですね。そうでないのだとすれば、マジメアイコンでユルい話題について触れる野呂さんの「天然っぽさ」にヤられてしまったといえましょう。

それでは皆様、この3ヶ月間、お付き合いいただき、さらにはツイッター等でコメントも書いていただきまして、どうもありがとうございました!

※連載「ネットで人気者になるネタの生まれ方」は今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。

中川淳一郎「ネットで人気ものになるネタの生まれ方!」バックナンバー

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中川 淳一郎(ニュースサイト 編集者)
中川 淳一郎(ニュースサイト 編集者)

1997年博報堂に入社。コーポレートコミュニケーション局に配属となり、企業のPR業務を担当。2001年に退社し、『日経エンタテインメント!』のライターとして活動後、「テレビブロス」編集者になる。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などをしながら、2006年からインターネット上のニュースサイトの編集者になる。現在は編集・執筆業務の他、ネットでの情報発信に関するプランニング業務も行っている。宣伝会議「Web&ソーシャルライティング実践講座」「戦略PR講座」講師。肉巻きアスパラ大好き。

Blog: http://blog.goo.ne.jp/konotawake
Twitter: http://twitter.com/unkotaberuno

中川 淳一郎(ニュースサイト 編集者)

1997年博報堂に入社。コーポレートコミュニケーション局に配属となり、企業のPR業務を担当。2001年に退社し、『日経エンタテインメント!』のライターとして活動後、「テレビブロス」編集者になる。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などをしながら、2006年からインターネット上のニュースサイトの編集者になる。現在は編集・執筆業務の他、ネットでの情報発信に関するプランニング業務も行っている。宣伝会議「Web&ソーシャルライティング実践講座」「戦略PR講座」講師。肉巻きアスパラ大好き。

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