人的営業を重視する傾向にあった日本のBtoB業界。
しかしクロージングまでの期間が長いからこそ、WEBを活用した効率的な顧客育成による営業支援が求められている。
「ここ1年ほど、アドバタイザーズ協会『Web広告研究会』のBtoBワーキンググループも活発に活動している」(同研究会幹事/調査委員長・渡辺春樹氏)というように、企業側の関心も取り組みも進化。こうした流れを受け『宣伝会議』11月15日発売号では、企業事例を中心にBtoB企業のWEB活用の可能性、考え方を紹介する特集を組んだ。
本誌での特集に連動して、このレポートでは実際にいま、BtoB業界においてWEBを使ったマーケティング活動の第一線で働く方たちに、その活用の現場の様子を一部匿名でのアンケート取材を交え紹介する。
BtoBとBtoCの垣根がなくなりつつあると感じている」と話すのはITソリューション提供企業の担当者。「電脳世界の現在の広がりと実社会の広がり具合が同じ速度で展開されていることを考えれば、活用の方向性はもっと多様な展開が考えられるはず」と活用の可能性に期待を寄せる。一方で 「選択肢の多い分、その選択に非常に苦慮する」とも話す。
ドイツ発のプロ仕様、業務用品通販事業を行うカイザークラフト、マーケティング担当の下川氏も「まだまだ成功事例が少ない分、サービスやビジネスモデル次第で成功事例を作ることができる可能性に期待している」と話す。
さらにその企画・運用においては「BtoBとはいえ、最終的には個人の方に情報をお届けすることに変わりはない。BtoBだからといって、硬くなりすぎる必要はないと思うし、垣根なく情報発信をしていくのが理想」と続ける。
BtoBは、これまでWEBの活用を積極的に進めてきたBtoCとは異なるようであるが、最終的にコミュニケーションをとるのは企業の中の個人。『宣伝会議』特集では三菱電機、NEC、東芝の3社の事例を紹介したが、担当者へのインタビューからは同様の見解が示された。
電機機器メーカーで広報を担当する男性も「BtoB企業であってもWEBにおいて重要なのは、情報の新鮮さ、探しやすさ、わかりやすさであり、この基本はBtoCと変わらないと思っている」と話す。
一方で、BtoBならではの課題として「訪問者の裾野をいかに広げるか」というテーマを掲げる。また「訪問してくれた人に対しては、企業ブランディング活動と連動して事業内容やビジョン等をわかりやすく、かつ魅力的に伝えることで、企業への理解を深めていただくとともに、ファンになっていただけるような情報発信を心がけている」と話す。
さらに、取材の中で出てきたのがBtoB企業のSNS活用について。本誌特集内では、東芝がYouTubeブランドチャンネル内で公開したフェイスブックコネクトと連動したゲーム「Play the Smart Community Game!」の事例を紹介したが、これはグローバル市場を見据えてのこと、という。WEBを使う目的のひとつに、グローバルへの対応が挙げられることから、SNSの活用も今後の課題となりそうだ。
11月15日発売号の特集では、前述の3社の事例他、「BtoBでも起こる顧客の変化―現在の購買プロセスを踏まえたWEB戦略を考える」(ビービット・渡辺春樹氏)、「ユーザーの情報収集経路から考えるこれからのコミュニケーション活動」(ノマド・湯浅誠氏)などの記事も掲載。BtoBでも起きる顧客の情報収集行動の変化、あるいは企業が対応すべきグローバル化の問題など、BtoB企業を取り巻く環境変化とそこで発揮されるWEB活用の可能性を各種データをもとに紹介している。