カフェから始まるローマの平日
一年のうち晴れの日が280日という陽気な地中海気候のローマですが、冬が近づくにつれ曇り空で底冷えする日が増えます。職場はムッソリーニ時代に植民地を管轄する省庁が入居していただけあって、石造りの重厚な建物で一層寒々しい雰囲気が漂います。
国連はニューヨークに本部を置く事務局を筆頭に傘下に様々な専門機関やプログラムと呼ばれる個別運営機関があるのですが、本部はジュネーブ、ウィーン、ナイロビなど世界各地に分散されています。ローマには国連食糧農業機関(FAO)のほか日本でもよく名の知れた世界食糧計画(WFP)と国連農業開発基金(IFAD)の3つの食糧関係機関が本部をおいています。国際機関といえども南イタリアにあるので現地の文化がじっくり浸透して、職員の朝は一杯のカフェから始まります。8時半始業ですが、職場近くのカフェは立ち飲み客で朝早くからにぎわっています。
「イタリア人の朝一番のカフェは牛乳たっぷりのカプチーノ、そして10時のコーヒーはエスプレッソ、昼食後はマキアート(ちょっと牛乳がはいったエスプレッソ)で締めて、午後のコーヒーは眠気ざましのダブルエスプレッソ、っていうのがオツなんだよ」と勤め始めたばかりの私に、イタリア歴18年というアメリカ人同僚が教えてくれました。 調子にのって真似したところ、私はあっという間に胃腸炎を起こしました(『When in Rome, do as the Romans do(郷に入れば郷に従え)』ということわざも、コーヒー習慣だけには当てはまらないようです)。ちなみにイタリア人同僚いわく、彼女は3歳から寝る前にカフェラテを飲み始めたらしいですし、カフェ文化はイタリアでは重要文化財並みの扱いでスターバックスなどのアメリカ系チェーンカフェは一軒たりとも見当たりません。
100人いれば100通り!国連への就職方法
さて、カフェ話はこの辺にして国連への入り方について紹介することになっていたので本題に入りましょう。以前大先輩のベテラン日本人国連職員に「国連は100人いたら、100通りの入り方がある」と言われましたが、まさにその通りで、それぞれの国の官庁から出向という形で働きにくる人もいれば、インターンやコンサルタントなど短期の契約でまず入り込み、能力を証明してポストにありつく、という人もいます。
特記すべきことは国連の職員の数は(組織によって方針は多少異なれ)各国の拠出金に見合った望ましい職員の数というのが割り当てられていて、どこの国出身であるかによって競争率が違ってくるということです。ここが民間企業への就職と決定的に違う点で、実は日本人にとっては朗報です。というのも日本は拠出金を沢山出している割に日本人職員自体の数が国際機関では少ないので、ほとんどの国連機関は「望ましい数」と定められているほどの日本人を雇いきれておらず常に日本人を増やす努力をしているのです。
日本人 マル秘 国連就職情報
FAOもそうした国際機関の一つなのですが、こうした機関は時々日本に採用担当者を送り込んで一斉面接を行います。採用ミッションと呼ばれるイベントですが、採用すること自体が目的なので、募集している職種と自分の経歴がマッチすればチャンスは広がります。外務省には国際機関人事センターという日本人国際公務員を増やすための支援課があり、Webサイトを通して必要とされる学歴や待遇の情報などを発信しています。
国連は日本のように新卒を採って育てるというよりは、必要なポジションに空きができたら経験者を採るのが主流です。募集情報は各国際機関のWebサイトでもチェックできますが、外務省国際人事センターが便利なメーリングリストを運営しているので登録すると定期的にお知らせをしてくれます。ただ国際機関では国際機関での勤務経験がある候補者を優遇するケースが多いので、民間からいきなり中途採用されるのはハードルが高いと思われるかもしれません。そんな場合にお薦めなのは外務省のジュニアプロフェッショナルプログラムです。35歳以下で修士号と実務経験を持っている人を対象に、面談と試験に合格すると2年の任期で国際機関に派遣してもらえるというものです(私もこの制度を利用してFAOに来ました)。特に広報や人事、財務やITの分野は需要が高いので興味がある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
また32歳までという年齢制限はあるものの、国連事務局では毎年特定の国出身の人向けに(日本はほぼ毎年対象になっています)採用試験を行っており、今年ではないですがラジオプロデューサーや広報の採用をしています。国連で働く日本人がどのような仕事をしていて経歴を積んできたのか、興味があるかたは「国連フォーラム」という有志のサイトを参考にされると面白いでしょう。日本の会社で働くのも楽しいでしょうが、一歩足を踏み出すとこういう世界もあるのだな、読んでいるだけでワクワクしてきます。
さて、色々な制度のお話はこの辺にして次回は実際に担当しているキャンペーンの話を通して世界に発信するメッセージって何だろう、ということを考えてみたいと思います。何か質問や提言があればぜひ教えてください!