ゲームに慣れ親しんだ世代が今後ますます増える
ゆめみ主催、モバイルマーケティングソリューション協議会(MMSA)後援のイベント が11月25日に開かれ、そこにGabe Zichermannという人物が登壇した。Gabe氏は米国で開催されているGamification Summitの主催者の一人であり、著名なスピーカーでもある。
筆者は事前に予定が入っていたので残念ながらそのイベントに参加することはできなかったのであるが、別途Gabe氏と面会する機会があり色々な話をした。氏は知的であるがかなり気さくで楽しく、話した中で共通した意見としては「ゲームに慣れ親しんだ世代は行動様式が違い“ジェネレーションG”とでも呼ぶべき新たな存在である」ということであった。
ゲームフィケーションに関しては本コラムでも過去3回取り上げており(「1億2000万人がゲーマーになる!? 『ゲーミフィケーション』理論とは」、「続・ゲーミフィケーション、消費者に受ける理由とは?」、「位置情報を活用するゲーミフィケーションの実践例が続々登場」)進歩の激しい新しい領域である。ちなみに“ジェネレーションG”と呼んでいる顧客は当然若い世代に多いのであるが、単純に年齢や年代のことではなくゲームに慣れ親しんでその様式を生活に取り入れているかどうかということが肝要である。Gabe氏によるとゲームによってジェネレーションGは年々賢くなっており、プラスのフィードバックスパイラルによって脳内ドーパミンが発生する状況を追い求めることになり、通常の生活の刺激だけでは満足できないのだという。
インターネットで調べてみるとGabe氏は、本年6月9日に開かれたTEDxKids@Brusselsで「ゲームがどのように子供を賢くするか(How games make kids smarter)」というプレゼンテーションを行っている。ちなみにスピーチは11月にアップロードされてこちらでご覧いただけるのであるが、下記にその内容を簡単に紹介したい。
自身がゲームにはまっていたというGabe氏は、ゲーム関連で生活できたことに幸せを感じているという。氏が特に興味を持ったのはゲームに集中できても授業には集中できない子供に関して、脳科学者であるNYU Lucan博士が「ゲームにより身につくのは授業向けとは別の集中力である」と書いてある記事であった。それは、授業は安定した静かな環境であり、ゲームのように変化が多く常にご褒美を得ることができる環境で無いからだといっている。
またワシントン大学のChristakis博士は、ゲームに慣れ親しんでいる子供は日常の世界を刺激の少ない退屈なものだと感じることがあると述べている。さらに最近のオンラインゲームでは、主人公の操作をしながらチャットを行い、親の干渉までマルチタスクで対応しなければならないのである。そしてこのようなマルチタスキングは脳細胞を増やし知性を上昇させることが証明されているという。
ゲームは学習の環境を提供する
ジャグリングを12週間学習した人間は脳細胞が増え、多言語を話す人は平均で15%ほど成績が良いという調査結果もあるということである。セラピストのKuszewski氏は問題解決能力を高める方法として以下の5つをあげている。1)新しい方法を追求する、2)自分に挑戦する、3)発想を豊かにする、4)難しい方法を実施する、5)交流する、である。これらの要素は多くのゲームに含まれており、したがってゲームは常に学習する環境を提供しているというのである。
そしてビデオゲームが流行った1990年台より、世界的にIQが恒常的に増加していくというフリン効果(Flynn Effect)が認められるという。これは、ゲームが与える課題をクリアすることで脳にドーパミンが放出され、次の課題を解決するという行動が強化されるためであるといっている。Gabe氏はさらに「ニンテンドーDS」で算数と語学を教える教材を導入したところ、18週間でその能力が1学年分向上した事例などを紹介しているが、それはその行為が“楽しい”からであり“他人と競争しながら行う”からであるといっている。
そして、ジェネレーションGは接してきた最大の娯楽がビデオゲームであり、ゲーム要素の入った経験を行うこと、すなわちゲーミフィケーションが要求されてきている。その例として氏はエコカーのダッシュボード上に環境にやさしい運転をすると植物が成長するゲームや、スピード取締りのカメラで制限速度以下で通過した運転手の中から制限速度オーバーの罰金を抽選で配給する仕組みを導入して平均速度を20%下げた事例などを紹介している。そのようなジェネレーションGが増えてくると世界はより早いペースで動き、色々なところに物理的・情緒的な報酬が存在し、人々が協調して行うグローバルな世界である。
ジェネレーションGを念頭にした新しい消費行動モデル
では果たしてこのようなジェネレーションGに対してのマーケティングはいままでのモデルと同じでよいのであろうか?広告宣伝に対する消費者の心理のプロセスとしては1920年代に米国の販売・広告の実務書の著者であったサミュエル・ホール氏が示したAIDMA (Attention:注意喚起、Interest:興味、Desire:欲求、Memory:記憶、Action:行動)が有名である。
またネット時代の購買行動のプロセスモデルとして電通の登録商標でもあるAISAS(Attention:注意喚起、Interest:興味、Search:検索、Action:購買、Share:情報共有)というモデルが提唱された。さらにソーシャルメディアが十分に浸透した時点での、ソーシャルメディアに 関与が深い生活者の行動モデルとして「電通モダン・コミュニケーション・ラボ」が提唱した生活者消費行動をSIPS(Sympathize:共感、Identify:確認、Participate:参加、Share & Spread:共有・拡散する)としている。
筆者としてはジェネレーションGに対するゲーミフィケーションの消費行動のプロセスモデルとして敢えて一つの仮説を立ててみた。
AIPECS (Attention:注意喚起、Interest:興味, Participate & Engage :参加・繋がり、Consume:消費、 Share:シェア)
今回はあえて提唱してみたが将来にわたり取り上げたいテーマであると考えているので皆さんのご意見をいだだけるとありがたい。
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