こんにちは。片岡英彦です。第4回目は戦略広報上の「再現性」についてです。
私たちが生活動線上で接触する情報の量は日に日に増加しています。私たちにとっての情報の価値(総体的な)は高まる一方、個々の情報の価値(相対的な)は減少していきます。仮に顧客に「リーチ」しても、期待通りの「影響」を与えることはより難しくなっています。
情報の送り手は、情報を「再現」することで、顧客に「繰り返し」情報に接してもらいと考えるようになります。これは「広告的」な手法であれば可能なことです。「再現性」とは、むしろ広告的手法の「強み」でもあります。例えば、同じ広告枠を繰り返し購入したり、顧客の生活動線上にある複数の媒体を利用したりして、「重層的」に顧客にアプローチする方法などの「再現」が考えられます。一方、「広報的」な手法では、通常、「再現」はできません。「ニュース性」「客観性」が失われてしまうからです。
では、増大する情報量の中で、どうすれば広報的手法で、自らが発信する情報を「再現」させることができるのでしょうか?
以下の3つのポイントが重要だと思います。
<「再現」についての3つのポイント>
- 伝達ルートは確実か?(確実性)
- 情報は陳腐化されていないか?(多面性)
- 統一感は保たれているか?(整合性)
ここで上記の3つのポイントを、芸能界のご意見番(!?)和田アキ子さんを例に考えてみました。
<情報伝達の確実性>
テレビのレギュラー番組の他、年に一度の紅白歌合戦、ワイドショー、スポーツ紙等々、自らのメッセージを確実に伝えるチャネルを持っています。こうした「確実性」のある情報伝達経路(まるでダイレクトメッセージを送り届けるチャネルのような)があればこそ、必要な時に必要な情報の発信が可能です。
<情報の多面性>
私の知る限り、和田アキ子さんは、以下の4つの切り口(多面性)で、TPOに合わせた話題をメディアに提供し、繰り返しメッセージが再現され続けています。
- 「男まさり」(ゴッドねぇちゃん)
- 「涙もろい」(面倒見が良い、料理が得意)
- 「芸能界のご意見番」(歯に衣着せぬ)
- 「実力派歌手」(紅白の「トリ」を務める等)
この複数の側面を持つことにより、長きに渡ってメディアに登場しても、発信するメッセージが陳腐化せず、常に新しい切り口での話題提供が可能となります。
<情報の整合性>
繰り返しメディア露出されても、「和田アキ子」という、ある種の「ブランド」は「整合性」を失いません。4つの側面(多面性)がそれぞれ矛盾していないからです。異なる4つの側面が一人に内在していることで整合性を保ち相乗効果を生んでいます。
しかし「多面性」をメディアで表現する際には注意が必要です。かつて、女性アイドルとして人気だった歌手の方が、金銭スキャンダルの記者会見の席で、芸能記者に「逆ギレ」し、一気に人気を失ったことがありました。すでに確立されたイメージとかけ離れたメッセージが、これまで築きあげてきたイメージを壊してしまった例でもあります。
一人の人間(商品であっても)の中に「多面性」が矛盾しない形で内在しているからこそ「再現」が許されます。再現されるだけの「型」(ある種のマンネリ)が確立されていることこそ、時にその「型」を破ることもでき、飽きられることなく繰り返し情報が再現され続けるのでしょうか。
規矩作法 守りつくして 破るとも
はなるるとても 本を忘るな (千利休)
来週は「First Choice」という視点で、紅白歌合戦の女王(!?)小林幸子について考察します。
それではみなさま。また来週。(この「〆言葉」も、そろそろ「マンネリ」気味でしょうか??)
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