これまで4回に渡って、僕が実施案を考える上で、気になっているモノやコトについてお話を展開してきました。今回は時間割の最後、プレゼン準備についてお話を展開していきたいと思います。
今回も専門家の方々はプレゼンやプレゼン準備について、どんなお話をしているのかとググッてみました。そうすると、とても良い記事を発見しました。
この記事で紹介されているのは、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス井庭崇研究室の作った「プレゼンテーション・パターン:創造的プレゼンテーションのパターン・ランゲージ」です。
「創造的プレゼンテーションのパターン・ランゲージ」では、34個のプレゼンテーション・パターンが紹介されています。その1つ1つが、「そうそう、そうなの、そこ悩んでるの」と共感できる状況設定⇒「あ〜っ、やっちまいがち」と思える、その状況下で陥りがちな問題⇒「なるほど確かに」と納得できる、具体的な解決策といった構造で展開されています。内容もプレゼンの振る舞いから、企画書作成、リハーサルに関することまでカバーされているので、プレゼン準備に関しては、この内容を実践すれば、問題ないんじゃないかと思います。またしてもケチで他力本願な性格が出てしまったのですが、紹介するだけではサスガにインチキ極まりないので、「創造的プレゼンテーションのパターン・ランゲージ」の中から、特に共感度が高かったものをピックアップし、それに些細な僕なりのコツを付け加えて紹介させていただければと思います。
創造的プレゼンテーション
プレゼンテーションを、『伝達』の場ではなく『創造』の場であると捉え直し、聞き
手の想像をかき立て新しい認識・気づきを生み出す『創造的なプレゼンテーション』
となるようにデザインする。
僭越ながら、僕も「伝える」と「伝わる」は異なると思っています。伝えるは一方的なコミュニケーションで、伝わるは双方向のコミュニケーションです。プレゼンテーションでは、コチラが伝えたいことを伝えるだけでなく、クライアントの興味と理解を引き出すことが必要です。そのためには、クライアントが何に悩み、何を希望し、何を知りたいか、理解することが大事です。クライアントが知っていることをプレゼンしても、その提案は実施にいたりません。プレゼンでは自分の経験や得意な分野の知識を組み合わせたクライアントが知らないけど、興味のある話を組み立てることが大切だと思っています。
メインメッセージ
最も伝えるべきメッセージをひとつに絞り、そのメッセージに関係する内容だけを取
り上げるようにする。
僕はプレゼンも企画書も、“企画の広告”を作る意識で取り組んでいます。従ってメインメッセージは、広告のキャッチコピーのように考えて開発します。キャッチコピーがプレゼンの全体を包括することはもちろんですが、クライアントのココロを鷲づかみするためには、文字通り“キャッチ”であることが必要です。プレゼンはベツモノと考えると気が重くなりがちですが、自分が作った製品(=企画)の広告とそのキャッチコピー開発だと思えば、通常業務で培った技術、経験、知識をヨコ展開することができるので、気持ち的にも作業的にもラクに取り組めます。細かい話をすると、企画書の表紙につけるタイトルにはとても気を使いますし、企画書の各ページでも、one sheet, one messageを意識し、1ページに複数のメッセージが存在しないように心掛けています。
心に響くプレゼント
このプレゼンテーションが誰に向けてのものなのかを意識し、その人が喜ぶような魅
せ方を考える。
よく目にするプレゼンテクニックは、「自分の意見を上手く表現する方法」といったように、話し手視点のものが多いですが、聞き手を設定せずに、伝え方やスキルだけを鍛錬してもあまり意味がないと思っています。話し手の意思がないプレゼンは困りものですが、コミュニケーションを成立させる上では、クライアントのことをまずは詳しく知ることが何より大事だと思います。クライアントの情報処理:理解システム、意思決定システムなどを理解した上で、自分の意見を伝えるために効果的な使う言葉と伝え方を選択しています。自分にとっては当たり前のコトでも、クライアントによっては理解が異なることもあるので、選択した言葉の定義を再確認し、場合によっては補足説明することも必要です。
ストーリーライン
メッセージが魅力的に伝わるストーリーをつくる。
企画を考えた経緯を丁寧に説明すれば企画は「伝わる」と考えがちですが、そんなことはありません。作り手としては開発経緯を大事にしたいところですが、製品(=企画)の開発経緯よりも、ストーリーのある広告の方が製品の魅力を引き出してくれます(そうじゃなかったら、僕らはメシ食えてないです)。ストーリーも起承転結で捉えがちですが、僕は「キャッチ⇒起・承・転・結」の構成をオススメします。結論を最後に持ってくるのではなく、クライアントの集中力がMAXなプレゼン冒頭で、一気にココロをつかみましょう。明快な結論から始まり、その後はその解説で終わるのが理想的なプレゼンストーリーです。企画書もプレゼンも、「キャッチ⇒起・承・転・結」のストーリー構成です。
図のチカラ
伝えたい内容が一目でわかるような図をつくる。
広告業界でお仕事をされている方には当たり前のことですが、図(グラフィック)にはチカラがあります。僕は図を使う(考える)ことには、もう1つ効能があると思っています。図を作成すると、文字で考えていた時とは違ったアタマを使うので、アイデアを精査することができます。文字情報⇒図の作業によって、配置だったり、カタチだったり、色だったりを考え始めます。文字では無意識に誤魔化していたコト、考えが至らなかったポイント、曖昧だった点などが図式化作業によって浮き彫りになります。細かいところまで突き詰めて考えていないと図は作れません。アイデアを精緻化する方法としても、文字情報⇒図式化をオススメします。ただ図も作り方によっては、改悪になるので、使い方には気をつけましょう。
「創造的プレゼンテーションのパターン・ランゲージ」で紹介されている「振る舞いに関するパターン」は、僕にとってはまだ上級者コースのものが多かったです。「なるほど」と思うものが多く、今後はこれらの領域にも手を付ける必要があるなと改めて実感させられました。そんな振る舞い初級者な僕が、現状実践しているのはしゃべり原稿とリハーサルです。
しゃべり原稿はプレゼンの台本のようなもので、各ページで話す内容をワードに書き出したものです。「企画書に加えて原稿まで作るのはメンドクサイ」と感じるかもしれませんが、モノグサな僕でも出来るので、そんなに大変なことではありません。プレゼンの時間にもよりますが、大体1〜2時間程度で出来ます。話す内容を書きだすことによって、プレゼン内容が安定するのはもちろんですが、企画書ブラッシュアップの機会としても活用できます。ストーリーに気を配って作った企画書ではありますが、話す内容で見直していくと、必ず推敲するポイントが出てきます。しゃべり原稿作成後は最終チェックのリハーサルです。可能であればリハーサルは、プロジェクトの事情や経緯を知らない第三者に聞いてもらうことをオススメします。そうすることによって、初見でプレゼンを聞くクライアントに近いリアクションを得ることができます。そのリアクション次第で再度企画書をブラッシュアップします。企画書はリハーサルを経てようやく完成です。
これで勝てる企画の時間割の全てのコマについて一通りお話を展開させていただきました。次回は総論として、「よい企画、わるい企画」について、お話を展開したいと思います。
上塘 潤一郎「企画を通すコツ~オリエンからプレゼンまでの時間の使い方」バックナンバー
- 第10回 コミュニケーションデザイン考:ロイヤルカスタマージャーニー(12/6)
- 第9回 「コミュニケーションミックス考:これからのブランディング」(11/22)
- 第8回 ターゲットミックス考:「顧客」 と 「ファン」(11/15)
- 第7回 メディアミックス考:「パラダイムシフト」 と 「ソーシャルネットワーク」(11/8)
- 第6回 「スピード コンセプトメイク」(11/1)
- 第5回 「問題?課題?オリエン後の課題整理」(10/25)
- 第4回 「オリエン準備で勝負が決まる(後編)」(10/11)
- 第3回 「オリエン準備で勝負が決まる(前編)」(10/4)