2012年の展望: スマートフォン・インターネット、ソーシャルメディアとゲーミフィケーション

スマートフォンは世界で戦えるプラットフォーム

皆さん、明けましておめでとうございます。

この原稿は12月27日に書いているので、日本の「明けましておめでとう」ツイートがTPS(1秒間のツイート数)で世界新記録を更新、などといったニュースが流れているのではないかと想像しているがいかがであろうか?

2011年の新春は、「前払いクーポン割引サービスおせち事件」が賑わっており、筆者も急遽記事を投稿したのが懐かしい。2012年最初になるこのコラムでは、私が注目しているキーワードを三つ挙げてみたい。なお、一部の内容は発売中の「宣伝会議」2012年1月1日号(新春特別企画――予測 広告マーケティング2012 )と重複していることをお断りしておく。

一つ目のキーワードは「スマートフォン・インターネット」である。筆者はスマートフォン端末の普及ではなくスマートフォン・インターネットが鍵であると考えている。日本ではもともと携帯電話でのインターネット接続が一般的であったので、その延長と考えることも可能であるが、世界的に見るとスマートフォン・インターネットの普及はより大きな意味合いを持っているといえるのではなかろうか。企業側から見ると、顧客がいつでも接触可能なデバイスを持ち歩いている状況というのは、歴史上初ということにはならないだろうか?

そう考えると、このトレンドはあらゆる意味で大きな社会的な変化をもたらすことになるだろう。今後はスマートフォン・インターネット上の施策を国際展開すれば世界市場で戦える可能性が高い。もちろんテレビやPCでも理論的に可能ではあるが、普及台数やコミュニケーションの深度を世界的に考えると、スマートフォン・インターネットが一番大きなプラットフォームとなることは明らかではないだろうか。

リアルとは異なる、もうひとつの「人間関係」の登場

二つ目のキーワードはやはり、「ソーシャルメディア」である。これに関して筆者は「ソーシャルネットワーク」ではなく「ソーシャルメディア」が鍵であると考えている。ソーシャルネットワークは既存の個人が持っているものであり、クローズドな関係でも成立するが、ソーシャルメディアではその関係が可視化され、ネットワーク以外へも伝播することが可能であると考えるからである。また、このようなソーシャルメディア上では、通常と違う関係値も続々と生まれている。フェイスブックやツイッターで実際の知り合いよりも多くの「友達」や「フォロワー」ができたり、モバゲーやmixi、GREEなどで有名人や企業のキャラクターと「友達」になれたりという関係はかつて存在しなかったものだ。

コミュニケーションアプリ

ただし、日本では重要なソーシャルグラフは携帯電話の電話帳の中に潜んでおり、今までのソーシャルメディアでは活用されていなかった。しかし、最近ここに食い込んでいるサービスが出てきており、スマートフォンの普及とともに大きく伸びているようだ、それがKakao TalkやLineといった新しいコミュニケーションアプリである。

これらのツールは広まっているものの、モラルに反した使い方や、サービス上のトラブルも散見されるので、利用に関しては十分にご注意いただきたい。このコミュニケーションツールの詳しい内容は別のコラムで紹介することとしたいが、今まで携帯電話に潜んでいたソーシャルグラフをスマートフォン上に開放するツールとして注目したい。

最後の注目は「ゲーミフィケーション」である。この背景にはゲームに慣れ親しんだ世代「ジェネレーションG」の登場、スマートフォン・インターネットに代表されるテクノロジープラットフォームの登場などが挙げられるが、一部の内容は宣伝会議2012年1月1日号(新春特別企画――予測 広告マーケティング2012)や筆者の過去の記事をご参照いただければと考えている。

江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー

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江端 浩人(事業構想大学院大学教授)
江端 浩人(事業構想大学院大学教授)

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、2005年日本コカ・コーラ入社、iマーケティングバイスプレジデント。2012年9月から日本マイクロソフト業務執行役員セントラルマーケティング本部長。2014年11月よりアイ・エム・ジェイ執行役員CMO。2017年3月ディー・エヌ・エー(DeNA)入社。現在、同社執行役員メディア統括部長兼株式会社MERY副社長。

日本コカ・コーラ在職中は、同社が運営する会員制サイト「コカ・コーラ パーク」を開発し会員数約1200万人、月間PV約10億を誇る巨大メディアに成長させた。

日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会が主催する「Webクリエーション・アウォード」で、2010年度の最高賞「Web人大賞」を受賞。2014年に日経BP広告大賞を受賞。2012年4月に開学した「事業構想大学院大学」の教授に就任。日本マーケティング学会会員。

江端 浩人(事業構想大学院大学教授)

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、2005年日本コカ・コーラ入社、iマーケティングバイスプレジデント。2012年9月から日本マイクロソフト業務執行役員セントラルマーケティング本部長。2014年11月よりアイ・エム・ジェイ執行役員CMO。2017年3月ディー・エヌ・エー(DeNA)入社。現在、同社執行役員メディア統括部長兼株式会社MERY副社長。

日本コカ・コーラ在職中は、同社が運営する会員制サイト「コカ・コーラ パーク」を開発し会員数約1200万人、月間PV約10億を誇る巨大メディアに成長させた。

日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会が主催する「Webクリエーション・アウォード」で、2010年度の最高賞「Web人大賞」を受賞。2014年に日経BP広告大賞を受賞。2012年4月に開学した「事業構想大学院大学」の教授に就任。日本マーケティング学会会員。

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