年末年始の小さなお仕事の話。
みなさま、明けましておめでとうございます。昨年はこのゆるいコラムにお付き合いいただき、ありがとうございました。今年も気を引き締めて、ゆるーく続けたいと思いますので、もう少しだけ、お付き合いください。本年もよろしくお願い申し上げます!
さて、年末から新年にかけての仕事といえば!あいさつ回り!納会!年越し蕎麦!初詣!仕事始め!ああ、なんて日本はメリハリのある国なんでしょうか。ここニューヨークではそのどれもが無く、12月中旬からすっかりみんながだらだらとホリデームードになってしまい、休める人はどんどんフェードアウトして会社に来なくなり、あまり仕事にならないのが実情です。社内のあちこちにクリスマス飾りが置かれて、パーティのお知らせがメールで飛びかい、楽しいんですけど、業務そっちのけな感じ。おまけに「12月23日から新年までなるべく出社しないように」なんていうお達しも出て。そして仕事始めは2日からと日本よりも早いのですが、こんどは逆にみんな普通に仕事を始めるので、なんか、物足りないんですよ。お正月ムードが恋しい。あけまして感がもっと欲しい。
そんななか、この年末年始の小さな作業をひとつ、振り返ってご紹介しましょう。Holiday Cardの制作です。こちらのAgencyではよく、ホリデーシーズンのご挨拶と自社のブランディングをかねて、Holiday Cardをクライアントや関係各社にお送りします。数年前は、デジタル系のAgencyなんかが率先して、凝った映像やらゲームやらFlash E-Cardを作っていましたが、最近はちょっと落ち着いてきて、みんななるべくシンプルにやろうとしているように思えます。チャリティと組み合わせたりして、世のために役立つHoliday Cardsにしているところも多いですね。ADWEEKが、Best and Worst Agency Holiday Cardsという記事を出していたので、興味のある方は見てみてください。
で、今回の弊社のHoliday Cardを、僕とヨースケ先輩に企画させよう、ということになり、担当者であるアレックス君が僕らのところに打ち合わせにやってきました。カレンダーをめくって思い起こせば、これ、10月中旬のことでした。アレックスいわく「今年のHoliday Cardは意義のあるものにしたい。弊社がFuture-Obsessed(未来指向)なAgency Networkであることをアピールしたい」とのこと。ふむふむ、社内作業とはいえ、面白そう。予算はほとんどないけれど、時間があるしね。早速ブレストでいくつかのアイデアを提示したところ、アレックスは、「もうすこし詳しいブリーフ(オリエン資料)を作るから、それにあわせてカードの企画を進めて欲しい」とのこと。わかった。待ってる。
しかしそれから数週間。待てども待てども、ブリーフ来たらず。いや、きっとアレックスたちも忙しいんだよ。きっと、あれこれ伝えたいことの整理とか、どこかのチャリティとの提携交渉とかがあって、オリエン準備に時間がかかっているに違いないよ。そして1カ月たった11月中旬。ついにアレックスから発せられたオリエンは、「今年のHoliday Cardは意義のあるものにしたい。弊社がFuture-Obsessed(未来指向)なAgency Networkであることをアピールしたい」…。ぬおお、アレーックス!1カ月前から1ミリも進んでないじゃないかーっ!
仕事の時間と自分の時間。
僕らだったら、やらなきゃいけない仕事があったら、休日出勤したり、徹夜したりしてでもこなしてきたけれど、こっちの人たちは、ちょっと優先順位が違うようです。だってアレックスたち、この1カ月の間、僕らが残業してても、「Good Night!」とか言ってけっこう早く帰っちゃってたし。このぜんぜん進んでないオリエンをしたすぐ後はサンクスギビングの連休だったんですが、このときもさっさと実家にターキーを食べに帰っちゃってたし。もちろん、自分の時間は大切です。家族も大事。人は仕事のみに生きるにあらず。でも日本人的に考えちゃうと、仕事あっての自分かなあとも思うし。うーん、どっちが正しいのか、どっちが健全なのか。アメリカに来たからといって、急にプライベート重視の生き方に切り替えられるわけでもなく、悩みます。
しかーし、そんなことを考えてる暇もなく、Holiday Cardの締め切りがどんどん迫ってきます。カードの投函リミットまであと4週間ちょっと。もう、デジタルコンテンツとかを作る時間の余裕はなくなりました。安くて、すぐできる方法で、弊社の海外ネットワークの魅力と楽しさをお得意さまに届けなきゃいけない。どうするどうする。ヨースケ先輩と僕はひいひい言いながら(でも楽しいんだけど)企画して、社外のアートディレクターのシンヤさん(やさしい大阪弁がとても素敵)、映像ディレクターのジェフ(聡明で日本語がすごく上手)、プロデューサーのサリー(美人だけど最近ちょっといじわる)、その他スタッフみんなの多大な協力を得て、なんとか、ぎりぎり、間に合いました。
いろいろ考えた結果。特定の製品を持たないAgencyの魅力って、見えない社風とか、ノリの良さとか、そういうところににじみ出てくるよなあ、と思い。この、クリエイティブが生まれるオフィスの「空気」を集めて、お得意さまに送ったらどうかなあ、と。そして作ったのが、3つめの写真の、これ。この空気パック、実は、壊れものとかを送るときに使うエアクッションなんです。そこらじゅうにあって、原価も安い。この空気パックを、世界中のお客様に、Holiday Cardとしてお送りすることにしました。メッセージと、ムービーを添えて。
こちらがその、空気の鮮度を伝えるムービーです。制作費をかけず、各地の社員のiPhoneで撮影しました。キャストも社員のみんな。監督のジェフは、これをクリスマスイブの深夜までかけて編集してくれました。大事な時間をありがとう。ちょっとだけ自分の時間がなくなっても、僕はやっぱりいいものをつくりたい。どっぷり日本式だけど、それでいいかも。アメリカ人には理解されないかもしれないけど、小さな仕事も、いやってほど全力でやりたいなあと思います。ほら、アレックス!できたよ、間に合ったよ、Holiday Card!あれ?アレックスは?え?みんなより1週間早くHoliday休暇に入ってるって?なにーっ!!
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さて、というわけで、せっかく作ったこのHoliday Card、もう年明けしちゃいましたけど、このコラムの読者のみなさまにもお送りしたいと思います。Facebookの佐々木のアカウント宛に「空気送れ」とメッセージをくださった方、先着20名様に、ニューヨークから、空気Holiday Cardをプレゼント!みなさまふるってご応募くださいー。いや、あの、別に、作りすぎちゃったとかじゃないんだからねっ!
佐々木康晴「NYクリエイティブ滞在記」バックナンバー
- 第7回 アルゼンチンの空港で取り囲まれる。(12/22)
- 第6回 英語ができなくてもいい、たくましく育ってほしい。(12/8)
- 第5回 給料がもらえなかったけど、僕は元気です。(11/24)
- 第4回 イタリア人が激怒。アメリカ人は早口でまくしたて、ブラジル人は静かに笑った。そして日本人は…。(11/10)
- 第3回 東京から来た社長に、ディグダグで遊んでるところを見られる。(10/27)
- 第2回 君は、ニューヨークの女子高生を泣かせることができるか。(10/13)
- 第1回 ニューヨークに転勤して初出社したら、席がなかった。(9/29)